6月の山行

奥羽山脈を歩く

~白岩岳日本一ブナの巨樹、真昼岳、ブナ施業指標林~


 日本一のブナの巨樹(巨樹とは幹周り4m85cm以上を言う)への道は、手が入っていない良さがあるものの、道が分かりづらく、倒木もあり、時間を要した為に、残念ながら途中で引き返すことになりました。2日目は真昼岳(1059m)へ。兎平登山口から続くブナ林は、そこに身を置く素晴らしさを感じました。稜線に出てからは、予想に反して風も雨も強く、頂上では、まったく視界がきかない状態でした。3日目は晴れで、TV番組「西和賀の秘境・秘湯」で紹介していた真昼岳の麓から、ガイドしてもらって、施業指標林に行きました。ブナの林は素晴らしいし、多くのギンリョウソウなども楽しみました。
 写真は自動的に切り替わります。
   会えなかった日本一のブナの巨樹/真昼岳山頂にて/可憐なギンリョウソウ/ブナの指標林・ファザーツリーの前で

◇実施日:2016年6月17日(金)~19日(日) 
◇参加者:女性3名、男性3名
◇行程(車利用、バンガロー・自炊宿泊):
 17日 我孫子5:10―(常磐・東北道・盛岡IC・46号)-12:15たざわこ芸術村12:25-13:00白岩岳ブナ巨樹入口(620)13:25~(15:00時点で
      引き返し)~16:20入口16:40~18:00六郷あったか山(バンガロー泊)
 18日 起床5:00-あったか山7:20-(横手IC・秋田道・湯田IC)-真昼岳兎平登山口(400)9:40~13:20真昼岳山頂(1059)13:50~17:15
      真昼岳登山口17:40―19:10高繁旅館
 19日 起床5:00―高繁旅館7:10―7:40真昼温泉8:00―8:30真昼岳兎平登山口(400)8:40~指標林(500)~11:50真昼岳兎平登山口12:15
      ―13:00母ちゃんの店わがや(昼食)14:10―(湯田IC・秋田道・東北道・常磐道) ―22:00我孫子
◇グレード:B
◇費用: 24,400円/人

プロローグ
 2007年7月にNHKで「巨樹 生命の不思議~緑の魔境・和賀山塊~」という番組が再放送されました。その巨樹と出会い、和賀岳には今までに2回向かいました。会の皆さんと行こうということで、今年の山行計画に組み込んでもらいました。
 調べたところ、中核の和賀岳への道は、秋田側の真木林道が土砂崩れの補修工事中で通行止め、岩手側からの登山は6月は川渡渉時、水量と水の冷たさで難しいと言われました。それで、和賀岳は来年に残し、ブナ林や花を楽しむべく、奥羽山脈の真昼岳、白岩岳の日本一のブナの巨樹(推定樹齢700年以上)、西和賀の真昼岳の麓に広がるブナの指標林とファザーツリー(推定樹齢300年)を巡る山行としました。

6月17日
 車で我孫子発、たざわこ芸術村でガイドの倉田さん、アシスタントの方と合流、大相沢林道の白岩岳北側に位置する入口へ。大相沢林道は土砂崩れがあり、通れるかギリギリまで分からず、結果、入口まで30分掛かる所までしか車が入れないと言われていたが、工事が進み、車で入口まで行くことができました。今シーズンに入ったのは初めてのようで、歩き始めると、道を特定するのが難しい状態で、倒木も多く、ガスに煙るブナの森は、樹齢何百年という太いブナもあり、森に抱かれているような感じになりました。時間が掛かってしまい、途中で引き返すことになったのは残念ですが、次回に取っておけということだと理解することにしました。
 夜は、六郷あったか山のバンガロー泊。友をはじめとする、金沢諏訪堂の会の方々との交流の場が持て、良き料理、良きお酒、良き会話で夜が更けました。

たざわこ芸術村のわらび座でガイドさんと合流 道なき道を進む
祠のあるブナのお出迎え 鬱蒼とした森を行く
見る事ができず幻となった日本一のブナの巨樹 今晩お世話になるあったか山のバンガロー

6月18日
 真昼岳への登山の日です。17日のガイドさんの話では、18日は悪くて曇と聞いたのですが、登るときには雨が絡んできました。雨もまた良しで出発しました。大きく広がる、霧に煙るブナの森は、神秘的でさえありました。花も多く、特にギンリョウソウの群生は圧巻でした。途中で出会った鷹揚な鼠は、取り上げた方の手の上でちょこんと座っていました。
 林間から抜け出し、兎平への分岐を越えると、ほどなく稜線に出ました。緩いアップアダウンの道を進み、滑落注意の急登を越えて頂上に到着。風が強く雨もあり、びしょぬれで寒い。秋田の仙北平野、和賀岳、岩手山、鳥海山、早池峰山などが見えるのでしょうが、視界ゼロ。神社の中で、昨夜貰ってきたフキの炊き込みご飯をおにぎりにしたものと燻りガッコの昼食を取り、早々に同じ道を下山、登山口到着は17時を過ぎていました。
 スーパー・オセンで食材を買い、湯川温泉の自炊宿・高繁旅館で、焼き肉に山菜など豪勢な品が並びました。
 真昼岳の詳細マップ

あったか山で見たヤマボウシ 真昼岳登山口
ブナの林がお出迎え ブナの森を行く
飛竜の滝 竜が天に昇りそうに神秘的 可憐なギンリョウソウ(銀竜草)
兎平との分岐 ちょこんと手に納まる鼠
真昼岳頂上の神社内で昼食 視界ゼロの山頂にて

6月19日
 やっと晴れ。ブナの施業指標林の日。真昼温泉で、カタクリの会の瀬川陽子さんと合流、早速資料を頂きました。電話やメールの印象と同じ、明るくて笑顔が素敵な方で、西和賀が好きが伝わってくるしゃべりも良かったです。カタクリの会は発足が26年前とのこと、我孫子山の会と同じで、そこでも凄く親しみを感じました。
 18日と同じ真昼岳登山口から入ったのですが、早速、ギンリョウソウのお出迎えです。きのこは、腐らせるものと、養分をやりとりするものの2種類あるとのこと、ギンリョウソウは、後者のような生態を持つ植物だとか。なお、きのこは5000種類くらいもあり、食の対象は数十種類しかないとのこと。
 施業指標林は、昭和6(1931)年母樹を残し、皆伐採し、昭和47(1972)年に間伐されたとのこと。ファザーツリー、マザーツリーを真ん中に、若いブナの力を感じることができました。そこで頂いた、コーヒー、地元の粽とフィナンシェの美味しかったこと。沼では、モリアオガエルの卵なども見ることができました。三兄弟と呼ばれている隣接する3本のブナの1本が倒れていた、これが自然の摂理で、そこにギャップができ、新しい芽が育って行くという輪廻。倒れた木に、タラノキが芽吹いていた、周りにその木はないので、鳥のフンが媒介したことが分かるというものでした。自然との共生、自然への思いなどを体感できたし、勉強にもなりました。
 11時50分に登山口に戻り、TVでやっていた「母ちゃんの店わがや」へ。ちょうど父の日で、父ちゃん定食は売り切れで、母ちゃん定食を食しました。とろろ山菜蕎麦、山菜などの天ぷら、煮しめ、みそ付のおにぎりなどで、美味ににんまり。お土産にと、またまたスーパー・オセンに寄り、降りだした雨の中を帰ってきました。

真昼温泉でガイドさんと合流 手前左が兎平、その奥右手が真昼岳
ここでもギンリョウソウのお出迎え 沼で見たモリアオガエルの卵
偉大なるブナ、マザーツリー ファザーツリーのもとで まったりした時間を過ごす
抱きつきブナ 母ちゃんの店わがやの「母ちゃん定食」ににんまり

エピローグ
 本山行は、自然との共生、人との共生がテーマだったのかもしれません。帰りの車の中の会話で、「山が半分」の山って何だろう、というものがありました。
 会報への寄稿文では、「ヒリヒリする登山、山と共生・同化する登山、是が根幹」と書いています。「人が半分」では、「充実した山人生が送れることになるのだろう」と。この「人」には、会のメンバーはもとより、交流を持った方々、山に貢献してくれている方々、こういった人々に感謝する、特に今回は、金沢諏訪堂の会の方々の思い、カタクリの会の方々の思い、こういったことに触れる山行もまた良しだし、そういう山行を増やしていくのも、一つの方向になるのではないでしょうか。そして寄稿文は「自分には何ができるのかを考え、行動することが必要なのではないだろうか」で結んでいます。これを機会に、こんなことを考えてみてはと思った次第です。
 この9月、東北の焼石・黒森山行があります。最後の日に、カタクリの会の自然観察会を入れるのも一つかと思ってきました。良き山に、良き人に、乾杯!


2016年6月28日  F・S記  

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今回の山行で出あった花々・植物たち

写真の上にマウスポインターを載せて左クリックをすると、大判の写真が見られます。
アスナロ(白岩岳) 秋田フキ(白岩岳) ウツギ(あったか山) クルミ(あったか山)
ヤマボウシ(あったか山) ショウブ(あったか山) ギンリョウソウ(真昼岳) ツツジ(真昼岳)
サワフタギ(真昼岳) レンゲツツジ(真昼岳) ツルアジサイ(真昼岳) ガマズミ(真昼岳)
エンレイソウ(真昼岳) シモツケソウ(真昼岳) スイカズラ(真昼岳) ナナカマド(真昼岳)
サワフタギ(真昼岳) ツバメオモト(真昼岳) ヒカゲノカズラ(真昼岳) ツツジ(真昼岳)
ウラジロヨウラク(真昼岳) ミズ(真昼岳) 白いキノコ(真昼岳) アザミ(ブナ指標林)
センノウ(ブナ指標林) フタリシズカ(ブナ指標林) ミヤマオダマキ(店わがや) ラン(店わがや)