奥利根の「水源の森」―ブナの森の中で迎えた朝 ➡写真の上にマウスポインター |
◇実施日:2017年8月11-12日(テント1泊) ◇参加者:女性6名、男性5名(計11名) ◇経過:
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はじめに |
ここ2年ほど、会員の理解と協力を得て「みどりのプラン」と銘打つ企画をいくつか試みてきた。その中身はというと、厳しい登山が難しくなってきたという方、のんびりと観光旅行を楽しみたいという方、そのほか準会員の方々を主な対象とした、山行外であっても“アウトドア”を組み込み、部分的に山行的な要素も取り入れた、よりゆるやかな企画内容だ。ふたを開けてみると11人もの参加があり、発案者・担当者としてうれしい限りの結果となった。 台風5号の影響が心配されたが、微妙なタイミングで日本列島を通過してくれた。期待したような、台風一過の晴天とはならなかったが、雨にたたられることもなく計画を終えることができた。あの樹海の真ん中でのキャンプ生活の模様、3張りのテントとタープで演出したにわか作りの人工の空間、そして参加された方々がかいがいしく作業をされる姿が、昨日のことのようにくっきりと思い出される。 |
説明のあとに*が付いている写真は、クリックすると大判のものが見られます。 |
8/11 |
朝7時半にKwさんが愛車でわが家まで迎えに来てくださった。8時前にトヨタレンタカー(我孫子)で8人乗りのワンボックスカーを借り受け、8時に待ち合わせ場所の駅北口に行く。くじ引きをしてもらい、2台に分乗して、我孫子を後にする。 常磐道から外環に入り順調に進んだが、東北道に合流したとたんに渋滞が始まった。お盆休みの初日なので当然ではあった。予定の1時間半遅れで日光道の土沢ICで高速を降りた。しばらく一般道を進み、今市のスーパーマーケット・ベイシアの駐車場に着いた。女性で夕朝の食事のための素材を、男性たちで飲み物(アルコール、水類)を買い込んだ。 |
今市市内のスーパーマーケットでまとめて食材を購入 | 東武日光駅前を過ぎると、市内にはひととき電柱が消えた その未経験の開放感! |
東武日光駅前からの道は、東照宮の改修工事が終わって再オープンされたそうで渋滞していたが、そこを過ぎると、ガラガラの道となった。山々は雲に隠れて見えなかったが、いろは坂を上り、戦場ヶ原近くに至って、男体山の裾野から中腹までや、前白根山近くにかけての山の景色が視界に入ってきた。 遅れた時間を取り戻すため途中の立ち寄りはすべてカットすることとしたが、金精トンネルの手前の駐車場で山(今回の最高所)の冷気をちょっとでも味わってもらおうと、短時間、車を停めた。そのトンネルを抜けると、広葉樹の樹海が陽光とともに車窓から目に入ってきた。 天候がいくらか好転した。右側に菅沼、丸沼を樹間に見て通過しながら、水に不安があるという声があり、丸沼スキー場の駐車場にひととき立ち寄った。あとは、日本ロマンチック街道をひたすら進む。片品村の分岐で尾瀬大橋を渡ったあと、戸倉で左折し、鳩待峠のほうに進む。分岐で既視感のある山道を左にとり、奥深い山の中へ入っていく。途中、鳩待峠-戸倉間で何台ものマイクロバスと行き違う。 その道から左にそれて、「奥利根ゆけむり街道」に入ると、先を行く路線バスに追いつく。坤六(こんろく)峠でバスを追い越し、さらに深いブナとダケカンバの落葉広葉樹林帯を縫う車道を進む。その先で目的地への分岐を間違えたが引き返し、「奥利根水源の森」のキャンプ地に着いた。しかし、予想外に多数のキャンパーがテント場ですでにくつろいでいた。探せども大型テント3張り分の適地は見つからない。 |
金精トンネルの手前の駐車場で。この行程一番の高所の 冷気だけでも味わってもらおうと、ひととき車を停めた* |
「奥利根水源の森」は人、テント、車でにぎわっていた 大型のテント2張りとタープ1張りを張る場所がない |
そのとき、混雑期にだけキャンパーたちのためにテントサイトと駐車場の“交通整理”をボランティアで買って出ている、山登りもやってきたという80歳にならんという方から、キャンプ地から小川をひとつ隔てた未開放のテントサイトを紹介され、案内される。好意のありがたさと幸運を感じずにいられない。 駐車場を後に小川に架かる橋を渡り、傾斜地をわずか上がると、清楚なテント地が広がっていた。周囲をブナが取り囲み、「水源の森」の中にある、まさしく「とっておき」のテント場だ。テント地まで協同して装備を運ぶ。心配した水も、小川を流れる清水が、飲用にも使えそうだ。 はや5時に近く、8人用(旧式ダンロップ)と6~7人用(スタードーム)、タープを急いで建てる。ついで、女性食事担当のTnさん・Nbさん計画によるシーフード・カレースープとワン・ポット・パスタ作りが進む。女性のみなさんにはいつもながら申しわけない。 黄昏前に、開会でFtさんがMmさんに新人歓迎の言葉を述べ、「乾杯!」の音頭で盛り上がる。幸いにも、この場所は駐車場と小川が隔てているため、他隊に心配する必要がなかった。 食事をいただいたあと、夜のとばりが降り、タープの天蓋の下、人工の光のフレアーの中で宴会が続く。みんなの笑顔がうれしい。ひんやりとした涼気を帯びた自然環境の中にどっぷりとつかる。森の中に夜の宴を演出する、異次元の時間だ。 11時まで続いたが、テントに入った。夜中に一雨来たようだ。 |
得られたブナ林の中に大型の2張りのテントとタープを設営 久々に夢が広がるひとときだ |
Tnさん、Nbさんの指示に従い、手分けして調理が進む |
Tn食担リーダーの指示に従い、夕餉の準備が進められる | すっかり時間がたったあとの情景 |
8/12 |
6時に起床。外は濡れていたものの、青空こそ見えないが、天候は何とかよさそうだ。朝食用のオープンサンドをおいしくいただく。 ひとときして8時過ぎ、テントはそのままにして出発する。昨日に予定したが、渋滞のためにできなかった、田代湿原を往復する散策だ。標高1400メートルの平坦な山の上なのに、水の豊かな山域だ、川の流れがあり、橋を二度渡る。渡り切ると、登山道になった(標高差180メートル)。左右にブナやダケカンバ見ながら、樹床にびっしりと生えた笹を左右に分け、登山道を進むと、30分余りで車道に躍り出た。エリアが車で周回できるようになっている車道だ。 車道を左にとり、「こもれびのみち」という田代湿原への道の案内板が立つ駐車場から、ぬかるみを抜けてさらに登る。20分ほど行くと、突然、樹林が開け、湿原が現れた。「小さな尾瀬」といわれるとのことだが、期待したほど規模は大きくなく、気候不順の影響もあるのだろう、花もほとんど見られなかった。1周900メートルほどの周回路を歩く途中、湿地帯で食虫植物のナガバノモウセンゴケを見つけた。登山者も行楽客もここは少ないが、そばの指導標には「武尊山まで4時間(?)」とあった。武尊牧場側からの行路だろう。 しばらく休んで引き返すと、テント場まではわずか30分ほどで、あっという間に着いた。急いでテントとタープをたたみ、お世話になったテント場を後にする。感謝を込めてキャンプ場をひと渡り見回し、湯ノ小屋温泉に向けて出発した。 |
テント場の風景(1)* | テント場とキャンプ場との間に架かる橋 清水の小川が流れる |
ブナの林を抜ける 気持ちのいい散策路* | 30分ほどで車道から「こもれびのみち」へ |
途中で見つけたナガバノモウセンゴケ* | 周回して戻ってきた地点から* |
ひと休みしながら、ナシをいただく | そろそろこのテント場ともお別れ 撤収にかかる |
静かな山道を下り、途中、右折して「首都圏の水がめ」といわれる奥利根のダム湖の1つの奈良俣ダムに立ち寄る。巨大なロックフィル・ダムだ。みんな、アイスクリームに舌鼓を打つ。あとの数か所のダム湖(八木沢ダム、藤原ダムなど)の見学を予定していたが、計画を変更し、カットすることとした。 計画変更で中途半端になってしまうが、交通渋滞を考えて宝川温泉の入浴もとりやめ、水上駅前の蕎麦屋さんで昼食をして帰途に就くこととした。この蕎麦屋さんは水上駅前の店の並びの西端にあって、湯檜曽川や谷川岳で雪上訓練のあった帰りにいつも立ち寄っている店だ。この日はSLの展示が行われていたせいか、行楽客が多くて、店が空くまでしばらく待った。 今回の旅を終え、水上ICから関越道に乗る。復路は、1回の休憩を挟んで、外環から常磐道、そして柏ICまで順調に走り抜けた。そして夕焼けで雲に紅の色がつき始めるころ、柏のガソリンスタンで給油と精算をすませ、トヨタレンタカー・我孫子営業所に車を返して解散した。締めて約580キロの車旅だった。 |
奈良俣ダム ※環境省発表:8月22日ではどのダムの貯水量も90%を上回る |
このダムは岩石を積み上げて造ったロックフィル・ダムだ 南相木ダムよりも堤の高さは高い |
奈良俣ダムの堰堤から下流を望む 向こうに見えるのは武尊山か* |
【謝辞】今回はMmさんの入会歓迎の意味も込めましたが、多数の方がご参加くださり、本当にありがとうございました。実施にあたって、また実施後には、会計や食事、テントやタープの後始末、撮影など、いろいろと分担をしていただきました。いずれもお礼申し上げます。 帰りのことも考えて計画の中身を一部変更したため、中途半端で計画倒れとなった部分もありますが、ご容赦ください。
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