11月の山行

 大根沢山(2239m)~大無間山(2329m)

 3日目にたどり着いた大無間山山頂/深南部らしい    *マウスをのせると 写真が変わります
超ハードながら良き仲間に恵まれ、紅葉見頃、大展望の大根沢山・大無間山山行を無事終える

1.実施日: 11月3日(土)から5日(月)
2.参加メンバー: Ng Nm(SL) F I(CL)
3.装備: 標準テント宿泊装備(但し2泊) 軽量化を企図
4.概算費用: 食糧・交通費等17,000円/人
5.グレード D(+ルートファインディング力)
6.集中連絡先:Mt

コースタイム

11月3日(金) 累積標高差 上り930m下り30m 距離4.6㎞ 山中行動時間4時間45分東京6:33-(新幹線)-7:54静岡8:20-(レンタカー)-10:40白樺荘11:45(出発)-12:20登山道取付点-13:05 1190mP13:15-14:05 1397mP14:25-15:50 1600地点15:55-16:30 1737mP(幕営)-21:00就寝
11月4日(土)  同 上り1,020m 下り650m 同8.4㎞ 同11時間起床3:30、出発5:40-6:35 1903mP6:45-7:35田代沢の頭8:00-8:30 2135mP-9:15 2137mP10:25 大根沢山10:45-12:25アザミ沢コル(水場)12:5514:35 2127mP14:40-16:05 三方嶺16:15-16:40 2102m地点の池(幕営)-20:30就寝
11月5日(日)  同 上り730m下り1,950m 同11.7㎞ 同10時間35分起床3:30、出発6:15-7:30大無間山7:50-9:25中無間山9:45-10:40小無間山10:55-11:35 1978mP11:45-12:50 1805mP13:05-14:00 1452m地点14:10-14:25 鉄塔14:40-16:10 明神橋-16:45白樺荘(入浴) 17:50-(レンタカー)-20:20静岡21:52- (新幹線)-23:07品川-23:14東京

山行概要

 腰部神経根症で、長く歩くと右足付け根が痛んでくる。ハードな山行を設定しながら、チームの足を引っ張らないかと不安がよぎる。しかし整形でもらった薬とシップで事なきを得た。チームの息も合い、距離24㎞、累積標高差で登り2620m、下り2630m、ガレ場、45度の急斜面、痩せ尾根、標識なし等のハードな山を歩きとおすことができた。とりわけ小無間山からの下降がルートファイの難しさを体感したところ。おそらく記憶から消えることのない山行となったと思う。
 また、達成には軽量化が鍵と、チームの皆さんには幾度か念を押す。朝夕はフリーズドライ(以下FD)食品を多用、共同食料含め共同装備個人分は1人当たり2.1㎏、朝夕以外は各自の行動食とした。各自個人装備等重量に幅があるが、水を入れて10数㎏の重量に抑えられたのではないだろうか?
 数年前に山伏に行った際に大谷嶺から南西に見えたすそ野の広い大無間山、そして長年の課題の山に登頂できたことは大変うれしい。次回はガスで見えなかったが、深南部の黒法師岳を目指したいと感慨に耽っている。



 
 1.いざ紅葉の中出陣(Ngさん撮影  2.ここが林道入り口  

 
3.林道を離れここから入る  4.期待の通りあったブルドーザー 
3日 快晴
 静岡駅からレンタカーにてNgさんの運転で、駐車地に向かう。まずは支度と腹ごしらえに明石温泉白樺荘駐車場に車を入れる。下りて、水を入れる。辺りを見渡すと、全山紅葉真っ盛り、眼前の紅葉の山が山伏か青笹山か、それとも他の山か。しかし、車の数は少ない。
 今度は駐車地に向け車を走らせるが、駐車地が見当たらず、畑薙の夏季臨時駐車場まで来て、もう一度戻る、そこで、初めて、白樺荘の前に明神谷林道があることに気づく。
地形図にある明石温泉の位置と林道入り口への不明確さから、30分ほど時間ロス。
 白樺荘右向かいの駐車地着。他に登山者らしき車はない。結局本日は誰にも会わなかった。風呂用品など不要なものは車に置き、広い舗装された林道を歩き始める、11:45分。すぐに過去の遺物となった畑薙ロッジ跡が見える。さらに林道を緩やかに上り、テープのあるところから林道と別れ、ルートファインディング担当のNmさんを先頭にかすかな踏み跡に足を踏み入れる。再度林道に出て、中部電力の送電鉄塔に登る鉄はしごがある。そこから登る。鉄塔からは畑薙第一ダム、茶臼岳、上河内岳の景観が素晴らしい。ダムの向かいの山腹は紅葉が盛りである。1397Pまでへの登りはテープがあるので間違うことはない。等高線は狭く、すぐに今回の中で最も急な登り、ほぼ直線的に木々につかまりながら登る。その後はツガの根が張り巡らされた痩せた岩混じりの細尾根を上下する。この付近は左右とも切れ落ちた急斜面で、落ちたら谷底まで。
 1397Pを越えてから紅葉の中をなだらかに下り、登りかえしたところにチーム全員がそこにあることを知っているブルドーザーが捨て置かれている、黄色の車体は、周りの木々の黄葉に染まっている。林道の終点でもあり、ここからわずかに登ったところにほこらが立っている。安全祈願をする。
 林道の目的が不明だがかなり広い林道で、駐車地からここまでは林道をたどることもできるが、既に何か所も崩壊しており、人も通れないほど崩落をしているところもある。
さらに歩を進めるとアセビと落ち葉が堆積した平坦で歩き易い踏み跡が続く。倒木は多いが薮はない。途中のヒメシャラの巨木に皆圧倒される。1時間強歩いて、1737Pのコブとコブの間のコルに緩やかな傾斜の場所をなんとか探しだし、今夜のねぐらとする。
 全く風もなく、テント近くに安全な焚き火場を作る。今日はMtさん推薦の餃子鍋とする。Iが食糧担当だが、軽量化からアマノフーズのFDを明日以降使うが、今夜は暖まろうと餃子鍋とした。冷凍餃子30個、白菜 タマネギ、ネギ、ニンジン、コンソメ、しょうが、そしてコショウだがこの日は暖かい。その後も火を囲みFさん持参のTさんから寄贈の焼酎をいただく。南アルプス深南部のフロンティアと称される永野夫妻(書籍南アルプス・深南部)もこの場所でツェルトに焚き火をしたと本にはある。
 東側の1737Pに大きな明かりが見え、木の上にライトを吊っているように見える。Fさんが前から女性の声がすると、「どなたか来ていますか?」と尋ねるも返事無。それもそのはずで、それは木々の間の月明かりであったからである。声は鹿か。午前3時ころまでは月明かりで目通しもきいた。


  
5.ガレから紅葉   6.3日のテン場


  
 7.田代沢への急登  8.苔といわかがみ

 9.しらびその中の大根沢山山頂

4日 曇りから時々晴れ、夕刻雨粒 風速10メートル以上
 暗い中でアマノのFD玉子スープと春雨を使った雑炊の朝食。Ngさん持参のウインナをおかずに。テントを撤収して暗い中ヘッデンを付け05:40には歩き出す。
 テン場から田代沢の頭までは等高線が狭い。イワカガミの群落が足元を覆い尽くす。頭へは急登だが、ジグザグゆえ、思った以上に登りやすい。登りきると、田代沢の頭、三角点もある。10m以上の風が吹きつけ、今日は終日風が強い。寒い。右(東北)に畑薙第一ダム方面への朽ちた標識。少し先まで歩き、北側が崩壊した薙の縁に出ると、ここからの展望は雄大で、信濃俣を隔てて向かいに光岳やイザルガ岳が見えている。山座同定からあれが光岳と推測(実は間違い)。但し右側(北北東)の山脈の山頂は雲で覆われていたためでもある(ここに実際の光岳がある)。
 ここから先は二重山稜になっていて、この山稜間にテントを張ると風が来ない。2135Pから先もイワカガミに覆われている。しかもこの先4日も5日にもイワカガミの群落がいたるところにあり、6月頃にはヤマ一面が花に覆われていることになる。元気な若い軽荷の単独行の男性一人と言葉を交わす。光岳も行けたらだが無理そうなのでと。さらに途中アザミ沢のコルあたりでテントを張った方とこの地点で一言二言話す。
 歩を進め2239mに達するが、だだっ広く、山頂はシラビソ林のさらに奥にある。シラビソ林と苔に覆われた大根沢山の山頂はさすが深南部。小休止。
 大根沢山から先へ深南部主脈のメインルートへ向かう。天気はと見ると、南アルプス方面は山頂に黒い雲がかかってきている。晴れ間がなくなった、また風も相変わらず十数メートル吹いている。最初の下りは右側がガレており、そのまま縁を降りるが、緊張を強いられる場所、雪がつくとザイルがないと厄介な場所。わずかトラバース道が左に見える。左前には真っ黒な広いすそ野をもつ大無間山が広がっている。どんどん下っていく。ここにもイワカガミが群落を作っている。途中のガレ場で縁を歩けるのは一か所だけ。
 ほとんどは右側(西側)がガレているので、左側(東側)にトラバース道となっているが、足場は極めて悪い。水場のあるコルは1822m。400メートを下ることになる。風が強い。ここまで全くなかった笹原の中を下る。
 ようやくコルに到達。相変わらず風は強く、雲行きは怪しい。笹原が広がり、どこに水場あるか見当がつかないが、降りると沢から流れでている水場がある。ここで明日下山までの一日半分の水を汲む。
 そこから三方嶺まで400m弱の登り返し。急な岩場や、両側切れ落ちて細い箇所も何か所も続く。2127Pの手前はテント場に最適で実際、一張りあり。今日会った登山者はこの方を入れて3名で皆単独行。Nmさんがポールを忘れたと、少し休む間に、ザックの横の木に立てかけてあるのを発見。Nmさんは大根沢山の三角点にもポールを忘れたと後で聞く。計30分のロスがあったことになると本人から申告。
 ガレの縁、笹原の中に三方嶺がある。ここまでトラバースやアップダウンしながら来たため、予想以上に時間を要した。そこには何が書いてあるのか不明な標識のみ。ガレの縁で北側の展望はいいが、山の上部は黒い雲に覆われている。寒い。
 今夜のねぐらは時間的には計画の大無間山は難しく、かといって距離も稼いでおきたいのでさらに歩を進める。引き続く笹原の中に張るか、もう少し歩いて2102mの辺りでどうかと考え、なければ笹原に戻るつもりで歩く。歩き始めて20分ほどの登山道左側にある大きな三隅池(といっても沼地)に到着。地形図にはこの池は記載がないが、かつては大無間小屋(または三隅池小屋)があったらしい。テン場探しにIは急いだため沼に片足を突っ込むはめに、さらにFさんも両足ともに踏み入れたため、登山靴がずぶ濡れ。それでもなんとか沼の北側の苔が生えたふんわりベッドになる沼畔にテントを張る(写真は撤収後)、周りにはビール瓶の破片や牛肉缶の残骸が散乱している。また焚き火の後も。我々は枯れ木で焚き火を起こして、風にも注意する。新聞紙とこの火でFさんの登山靴を乾かす。Fさんは三方嶺に食糧を恵んできたため、皆でシェア。
 夕飯はアマノのFD畑のカレーとFDライス。あとポテトウインナー。それにはタマネギ、人参、ねぎを加え、バターで炒めるのだが、ポテトが大きくて炒められず、煮ることに、最後ジャーマンポテトの素を二袋入れ完成。塩味が効いて、汗をかいた体には良い。カロリーもカバー。残りの焼酎でひとしきり談笑。就寝は20:30。 

 

  

 10.危ないガレ縁を歩く  11.気持ちのよいガレの縁の上を歩く

 
12.水場からコルを見上げる   13.これが主なトラバース道といわかがみ

5日 晴れ 風は数メートル
03:30起床、焚き火を囲み、朝食は、各自のFD米などにアマノのFD麻婆茄子丼とする。他に買ってきたホーチミンのミルクコーヒー。Fさんが変わっていて美味しいと。焚き火の火の始末はしっかりと行う。出発は06:10.この辺りだけの笹原と立ち枯れの木々の中をゆっくりと高度をあげながら歩く。シラビソ林に苔がついた斜面は深南部な感じ。山頂は右へ大きく回り込む。山頂手前はテン場としては更地が数か所。ようやく一等三角点の大無間の山頂に到着。木々に覆われた山頂だが、計画策定から3年間を経てようやく到達できた喜びから雄叫びを発する。
 下山を開始するも、Nmさんをはじめ皆が前無間方面に歩き出していくので、そちらだと南アルプスが見えないルートですよと声をかける。皆いぶかしがるが、私は山頂に戻る。少しの後皆も戻ってきて、小無間方面との分岐にたつ私が、ほらこちらが小無間に向かう方向ですよと、ようやく皆納得。Nmさんは磁北線の南北を180度反対にコンパスをあわせていたそうだ。そのまま進んでいたらどうなっていたことか。
 大無間山から小無間へすこし行くガレ場からの3日間通しての最高の好展望も得られた。青空に、空気も澄み、いわゆる南アルプスの全貌が。
 3日に光岳といったのは違っていた。手間の大きな山塊が大根沢山。その左奥に双耳峰の池口岳、その右から光岳、イザルガ岳、真ん中の写真で易老岳、仁田岳、兎岳、茶臼岳、聖岳と奥聖岳、上河内岳、赤石岳、その奥に荒川岳、悪沢岳、その右に雪を被った農鳥岳。光岳のさらに奥には木曽駒ヶ岳も見える。さらに右の写真では東側には笊ヶ岳、布引山があるが入りきれなかった。残念。山裾に目を転じると、声も出ない紅葉。ここで十二分に展望など満喫する。自分達が登ってきた数々の山々が、これまでとは違った角度から眼前に広がっている。そこへ、70才前後とおぼしき男性が登ってきた。田代を3:30に出発したと、展望に興味はないらしく、山頂は?と聞かれる。この日はこの方を含め4人の男性単独行に出会ったのみ。崩壊登山道のある田代からピストン。30代の若手は昨晩小無間小屋にただ一人で泊って、ピストンするのだと話し込む。歩を進め中無間辺りで休止すると、この二人が山頂から戻ってきた。ひとしきり話し込む。この日出会った登山者はこの二人を含め4人の単独行の男性。
 そして美しいシラビソ林を小無間山へ向かう。右側(南西側)に朝日岳や前黒法師や蕎麦粒山が見えるはずが、ガスっていて見えない。このガスが苔を育むのだろうと思う。今日南西方面は終始ガスっていた。ただ、2ヶ所で東にガスの上に富士山を見ることができた。ややあって小無間山に到着。
 小無間山から赤テープも田代方面と北方面にある。我々は北へ下る。標高線が密で、木につかまりながら、小石交じりで滑る斜面をいっきに200m下る。「落」と叫ぶこともしばしば。ここから先はGPSやコンパス、地形図必携で、テープや踏み跡頼りでは確実に道迷いをおこしてしまう。Nmさんも地図とコンパスで慎重に足を運ぶ。1965Pあたりで下る尾根を間違わないようほぼ東に右側尾根を下る。倒木で下りにくい道が続く。
 さらに紅葉の中を1805Pまで時に急斜面があるものの総じて広くて緩やかな紅葉の尾根を下っていく。ここにもイワカガミが。1452Pまでも等高線が密なところもあるが、緩やか。ところどころに、色あせた標識があり、かつては登山道であったことを示している。1452Pからピンクのテープが右尾根にも左尾根にもある。時間が予定通りで、Ngさんに温泉楽勝でゆっくりつかれますよと声をかけたが実際にはとんでもなかった。
 Nmさんも、Ngさんも右へいくと思っていたようだが、いや左ですよと。地形図を詳しく見直おして、左に進路を取る。右にはペケのペンキのサインもあるが見落としやすい。
 さあ、ここから気を引決めて下ることになる。時期だとヤマビルもいる。疲れた体と足に緊張感が続く、九十九折りの道。踏み外すと谷底へ、1時間30分も続く。
 白いビニール紐がいたるところにつけられている。苔の付いたゴーロ帯の下降で、途中鉄塔で息をつくが、ここから明神橋までは特に急で、道幅が狭く、また滑りやすいので細心の注意が必要。ただ谷底までの樹相は美しい。いたるところにロープが施設してあり、安全への手助けにはなる。Nmさんはポールを使い楽々下る。Ngさんは声を発しながら下る。Fさんは得意なのかさっさと下る。Iはやむを得ず下る。電線鉄塔用の巡視路があるがほとんどは落ち葉に埋もれ、滑りやすい。鉄塔整備の仕事をだれが引き受けるのかと皆で不思議がる。命からがらの仕事。明神橋に下りた時は汗だくとなっていた。この巡視路は下りには二度と来たくない。Mtさんに無事下山の連絡を入れ、明石温泉白樺荘の硫黄泉の風呂(510円)に入り、3日間の山行の汗を流した。 
T.I 

 
14.ようやくたどり着いた三方嶺 15.三方嶺付近のガレ場

 
 16.4日のテン場苔の上のクッション 17.新南部、しらびそ、苔と倒木といわかがみ

 
18.大無間山から山座同定 19.富士山も

 
20.気持ちのいいところもある  21.綺麗な谷だが、急阪を下る

22.下り急斜面はきつい 



 参考 食事

 
GPSの軌跡 


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