・・・3月の山行・・・

湯桧曽川の芝倉沢出合付近




幕営地付近で・・・さあ下山というのに、こんな盛り上がりようだ

*実施日 2019年3月23-24日(山中1泊2日)
*行動結果 23日 6.20我孫子駅前発~11.25JR土合駅前駐車場11.45---12.00土合橋---13.15一ノ倉沢出合---14.10幕営地点(幽ノ沢先;幕営)
24日 6.00起床---10.40幕営地点発---12.45土合橋---12.55土合駅前駐車場13.45~14.00谷川温泉14.50~19.30我孫子
*参加者 男性6名、女性2名(計8名)
*携帯装備 テント2張り(ダンロップ8人用新、エアライズ3人用)、共用マット4枚、コッヘル大1セット、こんろ2台(ガソリン仕様MSR)、らんたん2台(ガス仕様)、スコップ2本、ロープ1本(30m×8mm)、その他個人の装備
*経費 6750円(個人の食費、入浴代、帰りの食事代は除く)/車提供:Kmさん、Isさん


はじめに
 年度の計画にはもともと湯桧曽川はなく、中央アルプスの木曽駒ケ岳~将棊頭山を入れてあった。しかし、20年余前の冬期に、著名な山岳ガイド(松井登氏)が案内するパーティーが千畳敷カールの上で大規模な雪崩に巻き込まれ、ガイドも含めて6名が亡くなっていた。ほかにも、ここでは雪崩が何度も起きていたる。
 考えだすと、「千畳」が「扇状」とイメージされ、「カール」地形と合わさった半摺り鉢状の地形から、雪崩の懸念が増幅していった。悩んだ末に代案として出したのが、湯桧曽川の芝倉沢出合だった。安直かもしれないが、春の湯桧曽川は深い残雪で埋め尽くされる。これまで雪上訓練で再三経験してきたが、初めての人には“隔絶郷”となるだろう。初参加のMtさん、Unさん、Kdさん、Kmさんの名があり、後押しをしてくれた。

JR土合駅前の駐車場 さあ出発

23日
 午前6時に、いつもの我孫子駅北口ロータリーで待ち合わせた。20分遅れて2台の車に分乗する。途中、Kdさんを拾い、圏央道・常総ICから高速道に乗り上げた。順調に進んで、水上ICで高速道を降り、11時半前にJR土合駅前に着いた。周囲を見る限り、今年の積雪量は少なかった。無人駅だが除雪され、駅前の駐車場は開放され、すでに数台の車が停まっていた。予定よりやや遅れ、12時に歩行を開始した。
 しばらく車道を行く。土合橋を渡った地点から右にとり、湯桧曽川沿いの右岸を進む。青空こそないが、視界はそれなりによかった。この日、先蹤者の踏み跡はなく、スノーシューハイカーたちの姿もなかった。すぐ残雪の世界に変わったが、いきなり河川敷内にブルドーザーが停まり、残雪の川床を削る工事が行われていた。支沢を迂回して右岸をさらに進んだところで、スノーシューズ、ワカンを装着した。Isさんは、市中の除雪用の大型スコップを手に持って、それをストック代わりのように行く。
 湯桧曽川が残雪で覆われるその規模は、年々でかなり違っている。今回の残雪は前回(2017年3月11-12日)よりも雪嵩は少なかったが、川の流れが激しさを増すのは少し先のようだ。厚さ2~3メートルはあるだろう残雪が河床を占領し、50メートルほどの川幅にしては流れはまだ細く、浅かった。ずいぶん前のことだが、雪の消えた中洲に徒渉して渡り、流木を集めてキャンプファイアーで盛り上がったものだ。
 小1時間行くと、雪の行路上に雪に埋もれた小さな小屋の屋根が見えた。間もなく一ノ倉沢の出合だ。白毛門側の雪庇は今年は小さい。左には、一ノ倉沢の障壁が視界に入った。その先で右岸から中洲への小さな徒渉地点に差しかかった。浅い流れの中の石を踏み、またいで渡った。そこから程なく、完全に流れが雪下に消え、残雪で河床が覆われた。全面雪渓だ。
 2年前の幕営場所を左に見ながら通過し、30分、500メートルほど進んだところで、降雪が舞い、風が強まってきた。メンバーから「この辺でどうか」と声が上がる。ここは幽ノ沢の出合の上部で、まだ芝倉沢まで距離はあるが、悪天候が進行を阻んだ。風を避けるため樹林帯の中を選んで荷を下ろした。
 2本のスコップを振るい、靴で雪面を固める。広大な雪面に、自分たちだけの専用のテントサイトができた。Isさんだけは、テント場から離れた場所でひとり、作業を続けていた。こだわりの「トイレ」造りだった。8人用のそばに3人用のテントも建てる。
 当初、芝倉沢の手前で幕営した場合は、少し上流まで雪上歩行を楽しもうと思っていたが、この吹雪の中で行動をする状況にはなく、全員、テントに入った。早めの宴会が始まった。テント生活の楽しいひとときだ。そのとき、テントをバシバシとたたく音が強まった。みぞれかと思ったが、風を伴った降雪だった。
 この日の夕食は、ホワイトシチュー風野菜煮だった。Isさん、Kdさんが協力して作ってくれた。ベーコンなどの素材と生クリームとチーズを加え、ブイヨンで味つけした後、そのままフランスパンに付けて、チーズフォンデュのようにしていただく。ブイヨン味ベースの野菜煮風の一鍋もできた。
 翌日の厳しい行動が予定されているわけでもなく、のんびりとした懇親の時間が過ぎていった。とめどもない談話が続いたのち、KnさんとMtさんは別のテントに移った。

土合橋から見た湯桧曽川右岸の残雪面 ミズナラが並ぶ湯桧曽川右岸を行く

スノーシューズ、ワカンを履く 右岸通しで遡上する


ひととき晴れ間が見え、メンバーの表情がほころぶ


坦々と雪上を進む 小屋の屋根が雪面上にあった

          ↓↓徒渉点 清水峠

一ノ倉沢の出合のすぐ上の徒渉地点に向かう

徒渉するMtさん 水の流れが完全に消えた

Isさん渾身の作(ビバークサイトに使えるとの評も) 立ち上がった2張りのテント

テントの夜景 Kdさんの手際よい鍋調理




24日
 6時に起床すると、テントが雪をかぶり、外はどんよりと暗い雪空だった。20センチ余りの新雪が積もり、小雪が降り続いていた。この分だと、この日も上流への遡行や訓練など積極的な行動は選択しにくいと判断した。テント内でゆっくりと朝食をとりながら過ごし、9時にテントから出た。テント撤収ののち、早めに下山することを決めたのだ。
 降雪のなか、雨具を着て来た道を戻る。一ノ倉沢出合の近くまで戻るころには、雪が小降りになり、周囲が幾らか明るくなってくれた。湯桧曽川への適当な傾斜面を見つけて、少しでも、と訓練をすることになる。初歩のメンバーを中心に、ピッケル把持による雪面の登高・下降やトラバースの練習を30分余り実施した。
 もと来た道を戻る途中、上流を目指すスノーシューハイカーのグループと行き違い、1人のスキーヤーが追い越して行った。この広大な雪景色のなか、土合橋に近づくころ、ブルドーザーがうなりを上げていたのだけは興ざめだった。ワカン、スノーシューズを外して車道に出ると、昨日の景色とは一変して見えた。ここは北国で、多雪地帯だったのだ。一帯に新雪が降りていた。
 土合駅に着くと、車には30センチも雪が積もっていた。駅舎に入って荷物を整理し、温泉に向かった。帰路は、真岡から一般道コースをとった。守谷の行きつけの店で食事、清算をし、最後は車で送っていただいた。

一夜であたりの情景が変わっていた 幕営地点を後にする

降り続く雪のなかを戻る 徒渉地点を通過

一ノ倉沢出合の下で適当な斜面を見つけて雪上歩行の練習を トラバースの練習

土合橋を行く 土合駅前に帰った

後記
 新潟県出身のNdさんが、谷川岳の向こうとこっちとでは天候ががらりと変わる、と言っているのをよく聞く。帰る途中に連絡先のTiさんに連絡したところ、我孫子は好天に恵まれたという。水上から高速道で30分もたたない間に、周辺は晴れ上がっていた。さすがに、谷川岳のあたりは雪国だと気象の違いを再認識させられた。
 形だけの雪面ハイクだったが、雪上生活の技術も雪山登山では大切な一項目である。1つずつでも経験を積み重ね、自分のものとしていってほしい。そして、高い山を目ざしてほしい。5月GWには塩見岳が待っている。
 参加の方々には、多大なご協力・ご好意をいただき、ありがとうございました。
2019/04/15 TK 

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