神々の山嶺

 夢枕 獏著、集英社、初版刊行1997年


 先日、友人と一献傾ける機会があった。その友人は、家の整理をする中で見つけた、1997年に発行されたこの本を持ってきてくれた。表紙には、2年前にエベレスト街道を行った、その時に、ガイドさんに誘われ、エベレストのベースキャンプへの分岐点ゴラクシェプ(5140m)から標高200mくらい、カラパタール(5545m)方向へ登った辺りで見た、それと同じ、夕日で黄金色に染まったエベレストが描かれていた。
 
 そして、帯には、下記のように書かれていた。

 北上次郎:ついに、夢枕獏がやってくれた。まったく新しい山岳小説の誕生である。こういう小説が読みたかったのだ。
 北方謙三:“なぜ山に登るのか。なぜならここにおれがいるからだ。” このフレーズ。この孤立。行間から立ちのぼる男の極限の呻き。これはただの山岳小説ではない。これこそが、物語なのである。
 船戸与一:思わせぶりなあざとい仕掛けやら、ちゃちな小道具やらをふり捨てて、夢枕獏がトルクの音も高らかに、限りなくシンプルだが、壮大な男たちのドラマを構築してくれた。おお、この物語のはるかなる高見。乾杯!

 わくわくしながら、一気に読んだ。
 登山家である羽生丈二が、前人未到のエベレスト南西壁冬期無酸素単独登頂に挑む姿を描いた小説である。ジョージ・マロリーはエベレストに登頂したのか、という実際の登山界の謎を絡めて、岩壁は一種の麻薬であり、ヒリヒリする登山をやりたいという思い、特に、エベレストベースキャンプ5364mからの真実迫る内容が素晴らしかった。

 後で、インターネットで調べたら、柴田錬三郎賞を受賞、谷口ジロー氏が「エベレスト 神々の山嶺」と題して漫画本を出されており、2016年には映画が上映される予定になっているとか。昔、角川では、映画が先か本が先か、といったCMを流していたが、更に漫画が加わって、多角的に楽しめることになる。是非、手に取って読まれることをお勧めする。 
                                                           [201501 F・S]

  ポタラ宮(平山郁夫画) 


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