ザックの背負い方

~選び方とパッキング~



                                              2014/07 我孫子山の会・育成係

 登山に一番身近な装備であるザックについて、私たちは知っている、分かっているつもりで使用していますが、実は意外に知っていない部分があります。それらの知識の再確認の場にしていただきたいと思います。

1. ザックの選び方

1)背中の長さとザックの長さが合っているか
 背中の長さに対してザックの長さが短過ぎるケースが多く、特に男性や背の高い女性にこの傾向があるようです。逆に背中の長さよりもザックが長過ぎるケースもありますが、特に小柄な女性は注意してください。ザックは長さが合っていなくてもとりあえずは背負えてしまいます。でも背負えるのと、背負いやすいのとでは異なります。腰の骨盤を包むように正しい位置でヒップベルトを締め、自分の背中とザックの長さが合っていることが大切です。確認してみて下さい。
 
2)荷重分散ができているか
 ザックを背負って、骨盤の位置でヒップベルトを締め、ショルダーハーネスを引き、トッププルも引いてザックを体に引き寄せます。次に、ショルダーハーネスだけを緩めます。正しく設計され、腰で荷重を支えられる構造になっているならば、ザックはヒップベルトだけで自立しますが、ザックが後ろに倒れるならば、荷重を分散できずに疲れます。背負いづらく感じるザックは、このような後ろに倒れてしまうザックです。
 これには3つの原因が考えられます。まずはパッキング、要するに荷物の詰め方の問題。2つ目は調整などの、背負い方の問題。そして最後は、生まれついたザック本来のバランスです。
 横から見て厚みのあるボデッとした形状のザックや、通気のために背中に空間のあるザックなどは、荷重が背中から離れてしまうため、どうしても後ろに引っ張られてしまいます。形状だけで言えば、厚みを抑えた縦長のザックの方がバランスは良くなります。

3)ショルダーハーネスが肩に合っているか
 ザックにより、ショルダーハーネスのカーブや長さ、また幅や左右の間隔、さらには縫い付け角度など様々です。自分の肩や胸板にそれらが合っているかどうかは、背負い心地の上でもとても重要です。しかし、ピッタリのショルダーハーネスを見つけることは簡単ではありません。背中の背面長は、S、M、Lなどのサイズや調整システムにより合わせることは可能ですが、ショルダーハーネスに関しては自由に選べるようにはなっていません。



         図1 ショルダーハーネスの締め具合い
① ショルダーハーネスが肩幅に対して広過ぎます。
② チェストストラップで左右のショルダーハーネスを強く引き寄せ、正しい位置にしました。強く引き寄せていますので胸周りが圧迫され、バストにも干渉しています。長時間この状態ではかなり窮屈でしょう。また、腕も振りづらそうです。
③ 元々正しい位置にショルダーハーネスがありますので、実際にはチェストストラップをする必要などないくらいです。また、特殊なカーブによりバストをかわしていますので、胸周りがスッキリし窮屈感がありません。そして、ショルダーハーネスが腋の下へ自然に入り込み、腕の振りを妨げません。

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 4)いい加減な容量表示
 ザックの容量は「リットル」で表示していますが、同じ50リットルでも、ブランドにより実際の容量は違います。あるブランドの50リットルのザックが、他のブランドの40リットルより小さい、そんなことがあります。
 
5)軽いザックの弊害
 「軽くて背負いやすい」などの表現を目にしますが、UL(ウルトラライト)に代表されるような軽さを最優先して作られたザックは、特殊な素材等で軽くしているのではなく、フレームやパッドにプレートなど本来あるべき構造物を省いたり、ポケットなどの機能を省いて軽くしていることが多く、軽さを最優先にしてザックを選ぶのではなく、まず荷物の軽量化に取り組んでください。

【ザックの背負い手順】
 ① 背負う前に、ショルダーを緩めておきます。
 ② 両肩に背負ったらウエストベルトを腰の位置で締めます。
 ③ ショルダーベルトを引いて締めます。
 ④ わきの下でチェストベルトを締めます。
 ⑤ 鏡でチェックした際、ショルダーベルトが肩に沿うよう、きれいなカーブを描くのが理想です。  



2. パッキング(収納)
 
パッキングの要領は次のとおりです。
 ①ザックの背側にマットなど入れ、硬い物が背中に当たらないようにする。
 重い物は背中側、軽い物を外側に詰める。体に近いところに重心がある方が、ザックに引っ張られる感じが少なくなる。

 ②背に当たるザックの背側面積全体が平らになるように、左右に広げるよう詰める。
 むやみに上から押し込むだけだと、ザックが円筒状になって、背中で揺れて疲れる。

 ③ザック自体に防水機能を期待してはいけない。
 シュラフや着替えなど濡れてはいけないものは、ビニール袋で二重に包んでおく。

 ④左右が均等な重さになるように意識して詰める。
 左右のバランスが悪いと、歩きにくく、バランスも取りにくく、肩、腰に負担がかかり、疲れやすい。

 ⑤できるだけ隙間を作らない。
 具体的には、大きい物(例:シュラフ)をザックに入れたら、その周りに小さいものを押し込んでいく。ザックを外から見て、形がなるべくザック本来の形に近い状態で詰め込む。

 ⑥雨ブタに入れる物は小物
 ここには、軍手、電池、ライターや洗面用具といった、こまごました物を入れておくと便利。できるだけ目一杯積める。雨ブタの中身があまり入ってない状態だと、ザックのバランスが悪くなるので疲れやすくなる。

 ⑦重いものは上、軽いものは下 
 
基本は、軽い物を下に、重い物は上に入れる。重い物を下にした方がしっくりするように思うが、腰や肩にダメージをかけてしまう。ザックの重心は、肩胛骨付近からやや下あたりになるようにする。
 ⑧頻繁に出し入れするもの、緊急に取り出すものは上に入れる。
 実際には、レインウェアなど軽いからといって底の方に入れておくと雨が降ったとき取り出すのに大変。必要に応じて収納位置を変えた方がいい。

⑨ザックを、上下の2層ではなく、上層、中層、下層に分ける。
 下層では、あまり頻繁に取り出す必要のない、着替え、寝袋、マットなど到着してから取り出せれば良いものを入れる。中層の場合、休憩などのとき、必要とするもの。たとえば、食材、コンロ、ガス、クッカー、小物類、タオル、衣類など。上層では、すぐに取り出せるもの。小物類、ファーストエイドキット、水、行動食、セーター、固形燃料を入れ、その上には、雨具類(レインウェア、ウィンドブレーカー、ザックカバー)などを入れる。
 身分証明書、保険証、お金など貴重品は、ズボンや上着のポケットに入れておきたい。ザックが体から離れていったとき、山行が台無しになってしまうことがある。 

 

                          図2 パッキングの一例 


 *参考資料 
  この資料を作成するに当たっては、下記の情報を参考にし、また一部の写真・図を借用した
 ことをお断りします。
  ・山路風ネットの情報
    http://www.yamajikaze.net/top_data/yamajikaze_950.png
  ・セロトーレジャパンのカタログ  
    http://homepage3.nifty.com/cerrotorre-japan/products/img_navi/title_s1.jpg   


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