6月の山行

朝日連峰(1870㍍)ミニ縦走
古寺鉱泉~大朝日岳~西朝日岳~竜門山~日暮沢


(リポート3)


朝霧に濡れたウスユキソウを初めてみたとき「涙をためた明眸のようだ」とわたしは感じた。
今回、その姿のウスユキソウにまた会えるとは!

2日目。いやあ、幸運でした。こんなことってあるんですね。天気が崩れることはわかっていたが、竜門小屋を訪ねたくて予定のコースを歩くことにした。当然展望は期待できない。ただ黙々と竜門に向って歩く覚悟でいたのだが、それがなんと! 西朝日岳から竜門山の間に次々と素晴らしいお花畑が現れた。こんなにお花畑があるなんてわたしは知らなかった。それだけに内心小躍りするくらいうれしかった。それも本命中の本命であるウスユキソウの群落が次々とあらわれたのだから、これにはびっくりした。満足でした。おなかいっぱいに満足しました。やはりできすぎでした。朝日連峰は遠来の友をこころよく迎えてくれたんだなと思いたくなるような2日間でした。


天気予報は初日が晴れ、2日目が曇りのち雨だ。2日目のコースをどうするか。リーダーであるわたしの判断が難しいところだ。
天気予報を信じて、当初予定のコースを逆に取った。これが功を奏して初日に古寺山から朝日連峰のパノラマを見ることができた。そのうえヒメサユリが咲き、スプリングエフェメラルが花盛り、さらに頂上周辺ではウスユキソウまで観賞できた。当初の目的はありがたいことにほとんど達成できていた。たぶん皆さんも同じ思いだろう。
だからこそ、この先天気が悪くなるのなら、なにも竜門に向けて縦走を続けるよりも来た道を戻ってもいいかなというムードであった。わたしも初日がすばらし山行になり満足に近い気持ちでいたから、それならそれでもいいかなと同じ気持ちでいた。
しかし、わたしは、できるならば予定通り竜門山を経て竜門小屋を訪ねてみたいという気持ちを捨てきれないでいた。過去4度の朝日連峰の歩きはいずれも竜門小屋が起点といってもよかった。それに今日は竜門小屋には西川山岳会の皆さんがいるはずだ。ひさしぶりに会ってみたい。その思いが強かった。それにこれから先の縦走コースは夏道がほとんど顔を出し問題はないと、きのう竜門から歩いて来た人に聞いて確認している。少々ガスって雨が降ったところで稜線歩きは2時間半ほどだから、この天気模様だと何とか行けるのではないかと考えていた。

「どうしてそんなところに寝ているの」。その事情は前回話した。おかげでわたしは寝不足だ。
本間さんは焼酎を飲みすぎて寝言といびき。酒を飲んでいるとある時点からころっと口調が変わる。それがサインだ。なんのサインなの? うーん。
山本さんはビールを飲みすぎてご機嫌だった。その山本さんのザックはなんとマウンテンダックスのラトック。避難小屋1泊の山行で使うザックではない。なにが入っているのか。ほかの2人はわかっているようだ。出てきた。出てきた。ビールが4、5本出てきた。ごちそうになりました。冷たいビールを。
女性のmameさんが「シュラフの下のマットがびしょびしょだよ」。隣で寝ていた本間さんが夜中に自分の酒をこぼしたみたいだ。ごめん、ごめん、と神妙に謝っている。山本さんはシュラフの袋がないとマジで探し回っている(たしかにないと困る)。団体で山に行くとなんとも面白いことが起こるものだ。

 
朝食のコーヒーを飲みながら同行者に相談。出発する前に雨が降ってきたら来た道を戻る、降らなければ予定どおり先に進むということになった。


朝5時出発。雨は降っていない。予定通り中岳に向かって進む。
正面に中岳。夏道が雪の下から出ているのが見える。
少しずつガスが出てきた。雨は降っていない。


振り返るとガスが出てきた。大朝日岳が鋭いピークに変身。
見る角度でこんなにも違う。



縦走路は一部雪の下だが、問題はなかった。
中岳を振り返る。大朝日岳はその右。ガスに隠れた。

 西朝日岳。ちょっと前からとうとう雨が降り出し雨具をつけた。
幸いにも小雨で降ったりやんだりの状態。風がないことが何よりだ。
実はリーダーのわたしが一番ほっとしているのかもしれない。



さあ、ここからだ。予期しなかったウスユキソウのお花畑が次々と出てきた。
すごいよ! それも竜門小屋まで続くんだから。

結論を先に言おう。
わたしのカメラではウスユキソウの群落の広がりを撮ることができない。
なんとか表現できないか。やはり無理だ。しかたない。これで我慢するしかない。

 

 



女性のmameさんは動物にくわしい。わたしにデジカメを見せて「ゾウムシの交尾を撮れたよ」。
ガマガエル、クワガタ、カタツムリを次々と見つける。これも交尾中の一瞬を狙っている。
不思議な人だ。わたしはすっかり枯れてしまって、菜園のカボチャやスイカの人工授粉がもっぱらだ。

 7時40分、竜門山を下っていくと分岐に出た。ここまで来たら安心だ。
ここを右に曲がって日暮沢に下山するのだが、
皆さんにおねがいした。すぐ下の竜門小屋まで足を進めたい。OKだった。
わたしが行きたいのはもちろんだが、
みなさんも今後のために竜門小屋を見ておいたほうがいいと思ったからだ。

すぐに竜門小屋が現れた。懐かしい。私が知っている竜門小屋は今はない。
数年前に建て替えられたからだ。真新しい小屋だ。小屋の前にこた水がひかれている。
これは以前と同じだった。きのうは西川山岳会主催のウスユキソウ観賞会があった。
メンバーはもう帰ったのだろうか。小屋のドアを押して中に入った。8時近くなるのに大勢の人がいた。
すぐにぴんときた。西川山岳会と応募した人たちだなと。「西川山岳会ですか」。そうだという。
小屋の中は昨晩の宴会のニオイが色濃く残っていた。たぶんそうとうな盛り上がりだったのだろう。

するとわたしの目の前の小屋番の部屋から姿を現した人物がいた。西川山岳会の親分の遠藤さんだとすぐにわかった。わたしは以前一度会っているからである。面白い展開になってきたぞ。同行した女性のmameさんには、今回朝日連峰を歩くにあたって、この山をベースに活動している西川山岳会のホームページを教えた。mameさんもこの山岳会の皆さんの人柄にひかれたようだ。そのなかでも遠藤さんに。
その遠藤さんが目の前にいるのだからmameさんもびっくりだ。mameさんの熱い希望でツーショットが実現した。こんな出会いができるなんて、やっぱり山はいいね。mameさんも大いに喜んだ。じつはわたしも大満足である。竜門小屋を見ることができたし、西川山岳会、それも遠藤さんとお会いできたのだから。昨日の大朝日小屋の大場さん、佐藤さんに続いてこんな人との出会いがあるなんて、いいよなあ。
30分もお邪魔してしまった。皆さんはこれから朝食兼昼食だ。「どうですか、食べませんか」。じゃあ、といいたいところだが、ぐっと我慢した。「ウスユキソウの南寒江山さんまですぐだから行ってみませんか」。行ってみたいのはやまやまだが、帰りの時間も気になり南寒江山には行かなかった。ここまで来る道に連続したウスユキソウのお花畑で十分に満足だったこともある。

30分ほど小屋にいて「さよなら」を言った。小屋はすぐにガスの中に隠れた。
先ほどの分岐まで登り返して、いよいよ下山開始だ。



あでやかなシャクナゲがお別れに。


9時にユウフン山。ケータイがつながった。
タクシー会社に12時30分に日暮沢小屋に来るよう電話した。

清太岩山



日暮沢への道はブナの林が素晴らしい。
急いでいたので写真を撮ることができなかった。色白の美人ブナばかりだ。
12時35分、日暮沢小屋到着。タクシーが待っていた。
出発して少し行くと本降りになった。
なんかいいこと続きの2日間だった。

朝日連峰は今回もわたしにいい思い出をつくってくれたようです。
さあ、これから温泉です。
----------------------

PAGETOP

前のページ

TOP