戸台大橋のゲートの前で。4月25日から6月14日の間、戸台口から歌宿まで二十数人乗りの伊那市営の中型バスが運行している。戸台大橋からは荷物代200円を含めて1人、片道850円也。増発された3台目にようやく乗れた。 |
標高約1000m地点から、バスがぐんぐん高度を上げる。1380m地点から車道は戸台川を見下ろす北側山面に移る。懸崖を控えた場所で、運転手さんが、「そろそろ寒気のする地点です」と車速を落として、周囲のガイドを始めた。歌宿という平らな地点に着いて、ホッとする。
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歌宿から北沢峠まで、残すところの車道の1/3(約6km)をこの時季は歩かなければならない。車道上には崩落したクズ岩石があちこちに転がる。写真は鋸岳。左の三角錐型のピークが山頂(第一高点)、右の平たい峰が第二高点。その間のV字型の切れ込み部分が大ギャップ。過去、この難所を二度通過した思い出が脳裏をよぎる。 |
北沢峠(2032m)目ざして車道を延々と歩く。歌宿から峠までの高距は約400m、荷を背負っていると2時間程度はかかる。途中、大平山荘の前を通過して山道に入り30分で峠への最後の車道に出、間もなく峠に着く。遠景は駒津峰。 |
凍った北沢峠からの道を10分弱下ると、北沢長衛小屋のテント場に着く。写真はテント場から見上げた小仙丈ケ岳への雪面。テント場から、雪面に取り付いているパーティーが仰視できた。 |
1日目は仙水峠(2264m)に登ることにした。仙水小屋を過ぎ、もうすぐ峠という地点で、突如、怪しげな巨大岩峰が視界に現われる。甲斐駒ケ岳の摩利支天(2820m)だ。この峠の下には奇妙な岩クズを集めた地帯がある(野口五郎岳付近と似る) |
仙水峠から望んだ甲斐駒ケ岳の全容。奥の白い部分が山頂付近、右のコブが摩利支天。意外と雪が少なかった。この状態だと、わりと簡単に登れそうだ。 |
仙水峠から反対側に視点を移すと、鳳凰三山の地蔵岳があった。昨秋行ったばかりの山だ。小さいながらオベリスクが目を引いた。 |
頃よい時間にテント場に帰り着いた。早速、ビールを小屋で求めて、野外で高らかに「かんぱーい!」となる。黄色の大型テントがわが隊のベーステント。静かな場所を選んだ。せせらぎの音も快かった。空は真っ青に晴れ上がっていた。 |
われらが楽しい仲間たち。環状に石を並べて、宴会場を整えた。夕方の寒気が降りるまで野外で続いた。次から次とご馳走が出てきた。 |
5月3日、早朝の仙丈ケ岳への上りの道。北沢峠にあるトイレの脇の登り口からアイゼンを装着し、その日、下山地点までアイゼンをはずすことはなかった。2時間少々で森林限界に出る。ここからはほとんどが雪道となった。 |
森林限界を抜け出たところで振り返り見た甲斐駒ケ岳、仙水峠、栗沢山。仙水峠のくびれ部分の向こうの小高い山は黒戸山(黒戸尾根の五合目手前)、峠から流れ下るのが北沢。北沢の下のほうの裸地がテント場だ。 |
昨日、テント場からはるか高くに見上げた雪面に出て、急坂に差しかかるところ。この上の斜面は冬場にピッケルを打ち込みながら登った記憶があるが、さほどのことはなかった。ここを登り上がると小仙丈ケ岳(2855m)に至る。その下でライチョウが1羽、すぐ近くでハイマツの実をついばんでいた。ラッキー! |
小仙丈ケ岳から先の尾根上で遠望した塩見岳の方面。中央の両翼を引いたコブ状の山が塩見岳。その左側の背後にわずかに見える真っ白な山は悪沢岳、ずっと左の三角形の山は千枚岳で、塩見岳の右には中岳・前岳(荒川三山)、赤石岳、聖岳と続く。 |
北岳と間ノ岳。南アルプスには13個の3千m峰があるが、その上位2個を並べた、日本で有数規模の山岳景観だ。間ノ岳と仙丈ケ岳を結ぶ仙塩尾根の下に水源を発したあと、北岳の北側を回り込むようにして広河原の前を過ぎる野呂川は、身延、奈良田を流れ下り、最後は富士川となる。 |
近づいてきた仙丈ケ岳。左側の大きなえぐれた部分は、小仙丈沢カール。仙丈ケ岳周辺にはカール地形がいくつかあり、大仙丈沢カールは頂上からの仙塩尾根側にある。馬ノ背ヒュッテ側のえぐれ部分は、藪沢カールといわれる。写真からも、モレーン(氷河の舌端=流れの下端に堆積した岩石類)の存在がわかる。 |
仙丈ケ岳への主稜線上から振り返り見た甲斐駒ケ岳方面。雪は確かに少ない。 |
この日、三度目に見かけた雷鳥。すぐそばまで飛んできた。警戒する風もない。特徴ある「グウェー」という鳴き声を発する。
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山頂に続く最後の雪稜。3人が遅れて着いたが、仲間のがんばりを視線で後押しする。もう少しだ、がんばれ!
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山頂を後にしたところ。ちょうど正午ごろで、この3000m地帯でも暖かな気温になりつつあった。時間をかけ、周囲を堪能し、高所の風を受けながら、ゆっくりと下った。このルート上に危険地帯はほとんどないが、装備品にはピッケルが必携だ。スリップしないように注意して下る。 |
仙丈ケ岳山頂の先行組3名。360度、視界をさえぎるものはない。 |
遅れたが達した後続の3名。 |