8月の山行

小草平ノ沢(丹沢・四十八川支流)



(*マウスを写真にのせると入れ替わります )








実施日:2009年8月22日(日帰り)
参加者:男性5名、女性1名(計6名)
行路と時間:5.38 天王台・・5.41 我孫子・・6.41 (小田急線)新宿・・7.53 渋沢・・8.30 (タクシー)大倉の上・・9.00 入渓・・11.00 最後の10mの滝・・11.30堀山山の家・・14.00大倉(バス停)・・渋沢・・代々木上原(打ち上げ)・・19時過ぎ帰宅
装備:沢登り用の装備一般(9mm×40mロープ1本+個人装備)
経費:我孫子から交通費のみで約3200円


この沢の概況
 本会で手がける沢登りは少ない。年に1回か、多くて2回だ。真夏の8月は日帰りの山行の目標が、時間的な関係でどうしても東京近郊の低~中山に限られがちで、暑さから逃れる高所は領域外となる。それを埋め合わせるのが、納涼の沢登りだと期待されてきた。だが、沢登りを志向する会員は多くはない。
 今回、目標は勘七ノ沢だったが、なぜか入渓口で間違ってしまった。実際にたどったのは、小草平ノ沢だった。そのこと自体は叱責されるべきだが、結果的には、行路上で1人とも会うことがない静かなルートだったし、短い沢である割には、連続する滝(カスケード)など楽しい要素が多く、意外と大きな満足感を残した。聞いたところでは、勘七ノ沢は水量が多く、入渓者も多く、待ち時間のために予想外の時間を要したようだ。今回の沢登りは、厳密にどの沢を、という趣旨でもなかったから、今回のルート選択の誤りはむしろ幸いをもたらした。

 この沢は上りの行程が2時間程度とされ、初心(入門)者に格好のルートとなっている。規模が小さいので沢登り特有の危険性は少なく、落石やへつり・高巻きにおける危険も少ない。そんな状況から、明らかな高巻きルートはあまり用意されていない。ルート取りを間違えることもほとんどない(行程1/3ほどの箇所に分岐があり、分岐はここと、涸沢に至ってからの分岐部だけ;どちらも左にとる)。水量も適度で、滝つぼもなく、沢の規模からも鉄砲水などの危険性は少なく、逃げ道(一般道)までも近い。その割に、多数の滝が連続して出てくるなど、退屈することはない。数回はシャワークライムの経験も味わえる。ただし、大胆すぎる判断は禁物で、4番目あたりの8mの滝や、そのすぐあとに核心部となる滝(ここは直登は困難で、左岸をへつり気味に乗り越す)、そしてこのルートの上の最後の10mの滝では、侮りは慎みたい。適宜、ザイルを用いるべきだろう。とくに初心者がいた場合は、後学のためにもロープの適用を考慮するのがよいだろう。ロープは8mm×20mでよい。沢終了地点からの一般道への移動は短く、行路の検索も問題なく、藪に苦しめられることもない。15分程度で小屋(堀山山の家)の下の一般道に飛び出す。小屋(堀山山の家)のベンチを利用させてもらって一休みをしたあと、塔ノ岳や鍋割山を目ざさない場合は、下部に目を転じて、あとは、よく整理されたなだらかな大倉尾根を下れば、1時間程度で大倉のバス停に着く。今回は、車道に下ってから、民家が庭先に出した即売用の野菜に目を留めながら、休憩時間を入れて、締めて4時間ほど沢登りを含めた山行が楽しめた。
 レベルの高い登攀を志向する目的には適さないが、全体として、肩の凝らない沢登り、ゲレンデ的な使用として適切な沢登りのルートだ。

実登の模様
 今回の参加者はAbさんを除いて、だいたい決まった顔ぶれだった。集合したメンバーをあらためて見てみると、奇しくも、Mhさん以外、9月下旬に予定している北岳バットレス登攀に参加するメンバーで占められていた。

 5名は我孫子を後にし、新宿でリーダーのThさんと合流した。小田原行きの急行に乗り込み、渋沢で下車。大倉から奥、入渓地点の近くまで行ってもらえるので、とリーダーの判断でタクシーを使い、ゲートの手前で下車。少し車道を歩き、そこから分かれて右に下る。その先の迂回道をスキップして、数人が川沿いの踏み跡をたどる。その先で沢への取り付きに至る(別動隊もここに合流する)。しかし、ここは実は、勘七ノ沢への入り口ではなかった。ひと尾根を隔てて、東側にそれた別の沢だったのだ。勘七ノ沢の経験者は2名いた。その1人であるリーダー・Thさんのもと、疑うことなく他のメンバーは後に従った。入渓口は小さく、人影はなかった。確かに、有名な勘七ノ沢にしては奇妙な出だしではあった。しかし、それに気づいたのは、この沢登りが完結したあと、実に堀山山の家に至ってだった。行動開始前から、変な心理が芽生えていた。沢に着くまでに、すっかり北岳バットレスの予行訓練くらいの気持ちでみんなの心理は一致していて、今回の沢登りをそれ自体としてきちんとやり遂げるという心がけを、やや欠いていたきらいがあったのではなかっただろうか。

 準備を終わったあと、すぐ沢に向かった。普通は入渓までには、非正規の道を谷に下るなど、“関門”があるのだが、入渓地点への段差もまったくなかった。普通の道から、沢境に入る際の認識、あるいは場所間での確かな切り替えもないまま、バシャバシャと水の中へ入っていった。その先で、大きくドーム状に膨れ上がった地点に至る。タクシーの運転手さんから、この丸1週間、降水がないことを聞いていたので、水量はそんなものかと読んだ。その上ですぐゴルジュ(のど)の通過があり、Thさんはへつりながら通過する。撮影しながら私は追尾する。この沢は全体にゴルジュ地帯を連ねた溝状となっていて、大きく両岸が開けた場所というのはほとんどなかった。また、連続する滝はその規模が小さく、登攀の危険を免れたし、高巻きのルート上にも危険はほとんどなかった。

 その上部で、7m程度の滝が初めて出てくる。Thさんが模範までに、水を避けて右岸側を登攀する。全員、問題なく通過したが、しばらくぶりの滝に少し緊張した。その上で、数mの規模の滝が連続する。4つ目の滝で、この山行中唯一、ザイルを出した。その先にも、小規模ながら連瀑が現れた。規模が小さく、ほどよくホールドもついていて、快適だった。その上部で、この沢の核心部となる。ここの滝は登攀が困難で、中央部を避け、右岸側を少し高巻くように登ったあと、滝の縁をへつって滝の上部に達した。ここでやや時間を使った。この上で、二またの地点に出た。地図を出して確認するが、状況の読みと一致しないまま、左の沢をとった。結果的にこの選択はよかったのだが、地図の上での理解が実際と一致ないことには、見ていた地図上の沢が違っていたという問題があったのだから、間抜けな話ではあった。

 間隔をおかず次々と滝が出現してくる。規模の小さな、段差5mほどの滝が5段重ねになった、S字型の滝を遡行する。トップの姿が見えないくらいに先行したので、あまりアドバンテージを取らないように呼びかけたりした。そのすぐ上の滝は、水の流下が避けられず、シャワークライムとなった。

 さらに小刻みな滝が、休みなく現れた。何度、滝をやり過ごしたことだろう。しかし、まだ行路の誤りに気づかずに登高を続けた。15mの大滝だか、そんな滝があるというが、とうとうそれに出会えないまま、今回の沢では最大の10mの滝を迎えた。紅一点のNdさんが先行したが、上部への乗り越し部がハングしていて、なかなか突破できずに、時間がたっていく。Ndさんの下にAbさんもいた。他のメンバーは左岸を高巻き上部に出たところで、スリングを連結してNdさんに投げた。しかし、Ndさんの手に巻いた細いスルングが手にかかって、引き上げる体重で手が離れそうになった。危険を感じてもう1本を右手に投げた。この山行で実際にありえた危険はここのみだったが、Ndさんが上まで進みすぎたことと、上部からメインザイルではなく連結スリングを投げたこと、といった間違いがあった。

 その上で水流は消えていた。最後の詰めの話をする間もなく、15分ほどで尾根に着いた。そこは一般の登山道がたどり、その上には堀山山の家があった。沢に取り付いてから、2時間と少ししか経過していなかった。登った標高差は500m程度だった。小屋のベンチを借りてひと休みする間に、地図を出して確認し、やっと現地点とここまでたどった経路がわかった。自分たちは、根本から経路上の誤りを犯していたのだった。同類なのか、勘七ノ沢で仲間とはぐれたという、空荷の登山者が僕たちのそばに来た。水も食料も仲間のザックにあるそうで、当面の補給をしてあげて、勘七ノ沢が上部で至るもっと上の地点を目ざすことを勧めた。

 僕たちは、そのまま心地よいほど道のならされた大倉尾根を南に向かって下った。50分ほどで生活道路に出た。そこからは、農家の庭先に出された即売用の野菜が目を引いた。しばし立ち止まりながらだったが、渋沢までちょうどいい時間に来たバスに乗り込んだ。上りの急行にもいいぐあいに間に合った。早く下ったおかげで、Thさんの以前の地元、代々木上原で男性5名で簡単な打ち上げとなり、楽しいひと時を追加した。我孫子には7過ぎに着いた。
 みなさん、お疲れさま。このたびの行路の誤りは、結果をもってよしとしよう。




 タクシーを降りた車道を少し歩くと、沢側に右に分かれる。




 入渓地点。ここで支度を整える。人気のある沢にしては人けが少なく、また沢の規模が小さかった。実はここは、当初目標とした勘七ノ沢の取り付き地点ではなく、小草平ノ沢への入り口だった。勘七ノ沢は、入渓地点の手前で左にそれるアプローチを進まねばならなかった(地図参照)。われわれは、間違った沢を進んでしまった。
 入渓したばかりの地点。いつもの沢の雰囲気と変わらない。靴に水がにじみ込んでくる感触に慣れるまで。



 進むと、ドーム状に広がった地点を通る。この沢でいちばん開けた、そして気持ちのよい場所だった。
 最初に現れた7m程度の滝。体が登攀に慣れていないので、注意した。左岸側のホールドをたよりに乗り越す。



 連続する5段の滝。沢幅が狭まってくる。間をおかず次から次と滝が出てきて、退屈さを感じさせない。ほとんど危険を感じさせないレベルの沢ばかり。最後の10mの滝を除けばすべてフリーで登れるが、危険を感じたらロープを出したい。取り返しのつかないことだけは、しないこと。高巻きも危険はほとんどない。
 行程1/3ほどで出てくる7mの滝で、シャワークライムを楽しむ。



 7mの滝。中央部を登る。足の長さが関係して、難儀するLのThさん。この上にこの沢の核心部となる滝が現れるが、ここは右岸を高巻くようにへつって、上部に達する。
 小規模のカスケード(連なる滝)。ホールドもしっかりしている。



 この滝が最後となった10mの滝。上部がハングし、ホールドもなく、行き詰まったNdさん。なめてましたね、Ndさん。登ってからでは、遅いのよ。
 下るのも危険なので、高巻きして上からスリングを下ろして、手にかける。しかし、ザイルを出すべきだった。手で引っ張り上げる際に、手の自由が奪われるからだ。結局、左手のほうにもスリングを出した。



 沢の源頭部。涸沢となった。
 沢を詰めると杉林だった。上の空との境界を画するのが大倉尾根。



 堀山山の家。小屋の方、ベンチを利用させていただきました。ありがとうございました。
 下山時のメンバーの笑顔。中央は、周りに気づかいが絶えないLのThさん。メンバーによると、「彼と一緒だと退屈しないねー」との評。



 なだらかな大倉尾根の下り道。そのまま下っていけば、40分でバス停。

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