9月の山行

赤石岳(3120m)~荒川三山(3141m)


【会山行報告】

実施日:2015年9月19日(土)~24(木)(5泊6日:計画時より1日延長)
参加者:女性2名、男性3名(計5名)
コース
9月19日(土)
5:06天王台→7:00新宿(スーパーあずさ1号)→ 9:17上諏訪(豊橋行き)→ 11:50伊那大島(ジャンボタクシー)12:00→13:12鳥倉林道ゲート13:32→14:15登山口14:35→18:45三伏峠 幕営  
テント設営20:00 夕食なし 行動食で就寝21:00
9月20日(日)
4:00起床(お湯沸かし朝食・テント撤収6:00出発→7:20烏帽子岳山頂(2726m)7:25→8:40前小河内岳8:50→9:40小河内小屋分岐→9:45小河内岳山頂(2802m)10:00→13:30板屋岳(2646m)→14:50
高山南避難小屋   幕営 19:30就寝
9月21日(月)
4:00起床 テント撤収5:20→10:35荒川前岳10:45→12:02荒川小屋(テント設営)13:00赤石岳に向け出発 13:55大聖寺平→15:20→小赤石岳(3081m)→16:40赤石岳(3120.1m)→17:45大聖寺平→18:30荒川小屋テント場 夕食 21:00就寝
9月22日(火)
4:10起床 テント撤収6:30→8:25前岳分岐→8:40中岳8:50→8:55中岳避難小屋9:15→11:00悪沢岳(3141m)11:25→12:15丸山→12:20→13:25千枚岳(2880m)→15:28マンノー沢の頭(万斧沢の頭)→18:00 1700m地点でビバーグ 幕営 夕食20:00就寝
9月23日(水)
5:00起床 テント撤収6:40→7:42吊り橋→7:50二軒小屋→(伝付峠コースは断念し、椹島ロッジ宿泊のため、二軒小屋から椹島ロッジまで林道歩き)10:16→14:30椹島ロッジ 宿泊 入浴16:00、食事17:30 就寝21:00
9月24日(木)
5:00起床、5:30朝食、6:30(東海フォレストバス)→7:30畑薙第一ダム駐車場(タクシー)→10:00静岡駅10:52新幹線こだま640号→12:10品川(上野東京ライン)12:16→13:09天王台
★ 携帯装備:秋山テント泊縦走登山の一般装備
★ 経費(一人分/端数省略):合計約35,000  
   交通費 19,200/電車:5,800(往路:我孫子~伊那大島)+6,500(復路:静岡~我孫子)+タクシー:2,700
     (往路:伊那大島~鳥倉林道ゲート)+4,200(復路:畑薙駐車場~静岡駅)
   宿泊代(椹島ロッジ:2食付):9,000
   幕営料(三伏小屋、荒川小屋):1,400
   その他経費(弁当代、食材代、ビール代、他):約5,000
【プロローグ】
南アルプス南部は何か魅惑的である。言葉では説明できない。北アルプスの様な華やかさはない。山が大きくどのように日程を組んでも歩行時間が長く、しんどいのは解りきっている。それでも行きたい何かがある。
一昨年、HTさんリーダーで当計画があり、私もエントリーしたが、台風で中止となった。そのリベンジでもある。コースとしては、Hさんの計画をほぼ踏襲したが、下山は二軒小屋から伝付峠とした。経費削減が目的で、東海フォレストのリムジンバスを使わないため小屋に一泊する必要がなく、帰りの長距離タクシーを使わないので大幅に安上がりになる。このルートは丁度6年前の同時期に聖岳~赤石岳~荒川三山を4泊5日で縦走した時、下山ルートとして使用し、当時は特に問題無く歩け、又紅葉がとても美しかった印象が残っている。
今年はシルバーウィークが5日ありこの間に日程が組めたが、休みを全て費やすビッグ山行になるので、参加者が集るかが不安であった。参加者は私を含めて5人。信頼できる心強いメンバーが揃った。これから長い山旅、楽しみでもある。

【1日目】:日本最高所の峠三伏峠へ

直前に台風の心配もあったが、逸れてほっとする。我孫子にて全員が合流したが、皆荷物が異常に重そうである。これから4泊5日の山旅に出るので、当然ではある。
繁忙期にため、新宿からの特急あずさの指定席が確保できず自由席に並ぶ。7:00発のあずさは人気ではあるが、前の方に並んでいたせいか全員座れて一安心だ。
上諏訪で始発の鈍行列車に乗換えすっかり旅行気分だがここからが長い。2時間半を経過して正午近くにようやく伊那大島駅に着く。ここでジャンボタクシーに乗り込み鳥倉林道ゲートへ。バスが動いている8月迄は登山口まで行ってくれるのでちょっと癪ではある。
本日は三伏峠迄で歩行時間は短いが、高度を稼ぐ必要がある。何しろ三伏峠は日本最高所の峠で標高は2580mもある。950mの急登である。樹木林の急登をサブリーダーのHTさん先頭で登り出す。ほぼ展望は利かない。途中で1/10とかのマイルストーンがあるが、大きなお世話で、未だこれしか来ていないという感じで、かなりメゲさせられる。
いつになくこの日はMAさんが不調で足取りが重い。寝不足とのことであった。但し、翌日からは回復し、いつものタフなMAさんに戻っていたことを付け加えておく。
塩川からの分岐のあたりで日が落ちた。あと少しの筈でようやく三伏峠に着く。早速テントを張るがテント場は満員で、この8人用のテントは異様に大きい。何とか僅かなスペースを見つけたが、周りのテントと異常に接近している。大迷惑だろうが仕方ない。又、このテントは誰も張った経験がなく設営に悪戦苦闘する。しかも周りの迷惑もあるので小声でしか相談できない。小屋の主人には“あまりにも手際が悪いので見に来た”と言われる始末。苦戦しながらも何とか設営でき、時間的な問題から夕食は省略し行動食を食べて寝床につく。
鳥倉林道ゲート前で  いざ登山開始

【2日目】:静寂のルートにてハイマツの名峰小河内岳から高山裏避難小屋へ
いよいよ稜線に出るが、この日は高山裏避難小屋までの比較的楽な日。当初は荒川小屋までを考えたが、前岳の急登もあり無理と判断した。結果的には大正解で荒川小屋まで行ったら血ヘドを吐いてぶっ倒れていたであろう(ちょっとオーバーか?)。出発時も半数以上のテントはそのままである。やはりテントをベースに空身で塩見岳ピストンのパーティーが多数なのだろうか。
烏帽子岳に向かい塩見岳へ行く道と別れ、森林限界を超えアルペンルートの始まりである。気持ちが良い道だ。烏帽子岳~前小河内岳~小河内岳とピークを超えて行く。小河内岳は隣に避難小屋もあり展望の良い隠れ名山という言葉がぴったりの山で、ここで小休止する。
その後、標高を下げ森林に戻るが、きのこがやたら目に付く。しかも種類は様々であり、きのこ図鑑があり時間に余裕があれば調べながら行くのも楽しいと思う。
15時近くなってようやく高山裏避難小屋に着く。余裕の日ではあったが、丁度良い位の時間になっていた。楽勝の筈が、丁度良い位の感じでありこれからが思いやられる。やはり荷物の重さが負担になっている様だ。
小屋は満員の様なので、テントを張る。この日は時間的には余裕があったため、ゆったりとMRさん特製の野菜炒めを味わい床につく。
烏帽子岳近辺の気持ちの良い稜線 小河内岳より避難小屋を望む
きのこが非常に多い 高山裏避難小屋への道 紅葉が美しい
2日目の幕営地 高山裏避難小屋

【3日目】;きつかった前岳の登り~憧れの赤石岳
 この日はハイライトその一である。森林限界の抜けた後、待っていたのは心臓破りの前岳への登りだ。覚悟していたとは言え、重荷を抱えた身にはこたえる。しかし、登りきって前岳に近づいたあたりから絶景が広がる。ちょっとした岩場を抜けると前岳の山頂だ。今回の山行初の3000mピークである。
その後荒川小屋に向かうが、今迄と違いメジャールートに合流することになる。やはりシルバーウィークで人が多くてうっとうしい。荒川小屋までは急下りで、夏ならこの辺りは全面お花畑なのにと思うといささか残念ではある。

 荒川小屋に着き、正面の絶好の場所が空いていてテントを張る。この日のもう一つの目的は名物“荒川小屋のカレー”を食べることであるが、小屋満員御礼につき14時迄に食べなければ提供できないとのこと。これから赤石岳へのピストンがあるので、時間的に無理であきらめざるをえない。
 疲れているため、テントキーパーを申し出たMRさんを残し、4人で空身で赤石岳に向かう。当然とは言え空身は楽だ。以前追い抜かれた若者のパーティーを追い抜かしてしまった。“我々が抜かされるのは重荷のせいだ”といつになく強気になってしまう。とは言っても赤石岳は遠い。小赤石岳の肩、小赤石岳と小ピークを超え、ようやく憧れの赤石岳に着く。4人で思わず感激の握手をする。
 山頂は広く、20人位がいた。南アルプス南部の盟主の貫禄は十分である。しかしガスがかかっていて、展望が利かない。聖岳~光岳が見渡せたのにと思うとやや残念ではある。
 赤石岳を後に同じ道を下山するが、時間がかなりおしており日没との絡みで若干急ぐ。日没には間に合わなかったが、20分位のヘッテン歩行でMRさんの待つテントに着く。しかし、この日は皆疲労のせいか食欲が無い。軽く夕飯を済ませ、床に就く。
荒川前岳カールを登る 荒川前岳に続く岩場
気持ちの良い荒川前岳の稜線 荒川小屋に向かう
荒川小屋にて幕営 遂に憧れの赤石岳の山頂に立つ

【4日目】:中岳~悪沢岳~千枚岳のアルペンを満喫
 この日は今回の山行一番のハイライトである。連続の晴天で嬉しい。富士山が正面に見える気持ちの良い朝だ。しかし良い事ばかりではなく、荒川小屋もテント場も満員だった様で、早朝からトイレ待ちに長蛇の列ができている。おかげで、出発時間にも影響が出てしまった。結果としてはこの出遅れが影響してしまうのだが。
 初っ端、稜線までの急登りであるが、昨日の登りより遥かに楽である。2時間程で中岳につく。標高の割には地味なピークではあるが、展望は抜群である。すぐそばに中岳避難小屋があり、トイレ休憩をとる。小さな小屋ではあるが、悪天時には位置的に重要な逃げ場になるのかと思われる。
 ここから、今回山行の最高峰の悪沢岳に向かう。悪沢岳は日本第6位の高峰で東岳とも荒川岳とも言うが、深田久弥ではないがやはり悪沢岳の名前がピンと来る。悪沢岳はちょっとした岩山であるが、決して危険な箇所は無い。岩を繰り返し登りやっと悪沢岳の山頂に着く。今回のビッグピークその2で、改めて全員で握手を交わす。“この年になって行けるとは思わなかった”とMRさんの感激の一言が印象深かった。まだまだこれからも色々と行っていただきたいと思う。山頂は展望抜群で、塩見岳は当然としても 南アルプス北部のビッグネームが全て見渡せた。
悪沢岳を後に千枚岳に向かう。途中にやせ尾根やややスリリングな岩場はあったが、今回山行最後のビッグピークである千枚岳に着く。ここも展望の良い気持ちの良いピークで、ちょっと早かったがこの近辺は紅葉の名所とのこと。

 千枚岳から二軒小屋までの下山ルートは長い道のりである。しかもかなりの急下りで、6年前はさほど感じなかったが、今回は相当急に感じる。急下りの場合、ストックはかなり威力を発揮する様で、私の様にストック無しだと転倒防止に気を遣う。パッキングも併せて色々IBさんにアドバイスをいただく。有難い限りである。今回の山行ではリーダーとしての反省点はたくさんあるが、個人的な反省点もある。次回に生かさなくては意味がないので、次の穂高岳山行のでは荷物軽量化とストック使用を実施しようと思う。
 しかし、二軒小屋迄遠く皆相当に疲れている様子。このままでは日没までは確実に無理。この急下りをヘッテンで歩くのは危険であり、良い場所があればビバークするということで意見が一致した。ややもすると丁度良い平坦な場所があった。テントがあるので住的には問題はないが、水が少なく貴重である。その日の夜は幸いおでんが残っていたので何とかなったが、僅かな飲料水を皆で分け合った。まあ、このような連帯感で仲間意識が生まれるような気がした。
 又、疲労がたまっている上重荷で伝付峠を越えるのは危険で、畑薙第一ダムより静岡に出るのが最善と判断したが、宿泊者でないと畑薙第一ダムまでのリムジンバスに乗せてもらえない。二軒小屋で何とかリムジンバスに乗せてもらえる様に交渉する作戦を立て、HTさんMAさんと私で交渉することとした。
美しい荒川小屋の夜明け 荒川小屋から見る富士山
中岳への登り 小粒ながら貴重な中岳避難小屋
悪沢岳(東岳)山頂にて 悪沢岳より下る
千枚岳近辺の岩場 マンノー沢の頭にて
ベニテングタケ見つけた

【5日目】:二軒小屋~椹島ロッジでまったりと骨休め

 ビバーク地から下るには当然明るくなってからなので、テント内で朝食を採る。1本のトマトジュースを5人で分けたが、これが実に美味しく忘れられない味となった。
 廻りが明るくなり二軒小屋に向かうが、予想通り1時間位で着いた。早速リムジンバス乗車を交渉したが、断固拒否されどうしょうもなかった。伝付峠から下る道は来た人に聞くとかなり悪路とのこと。事前の早川町役場に問い合わせた情報とかなり違う。更に、MAさんが通った人から聞いた情報では手に持つロープだけで足場がなく、キックステップで足場を作る様な箇所があるとのこと。重荷では危険につき、椹島ロッジまで歩き、一泊してリムジンバスに乗って帰るしか手がなくなっていた。翌日仕事のIBさんと私は何とか職場に連絡をとり休むことを伝える。もうここは開き直って一泊のんびりするしかない。椹島ロッジまでの林道歩きは3時間と長いが、楽しみながらのんびりと歩くことにした。
 椹島ロッジに着き、手続きをして久々に風呂に入り夕食の乾杯をする。無駄な金を使わせてしまったが、寝床のスペースも確保されもうパラダイスである。
ビバーク地を出発 二軒小屋へのつり橋
山のホテル二軒小屋 二軒小屋ロッジの前庭で コーヒーで一服
椹島ロッジにて  長い山旅お疲れ様でした

【6日目】:長旅の終わりにいよいよ下界に

 朝食を食べ、朝一番のリムジンバスで畑薙第一ダム駐車場に行き、予約していたタクシーで静岡に着く。これでようやく下界に戻った気がする。静岡でお土産と駅弁を買い込み新幹線に乗り込む。長い山行の余韻に浸りながら。


【エピローグ】
 色々問題があったし、ハプニングもあった。反省点は別項に記すとして、晴天に恵まれ南アルプス南部を大いに満喫できた山行であり、10年経っても忘れない伝説の山行になったと確信する。メンバーについても私のリーダーとして至らない部分を皆でカバーしていただいた。逆にリーダーが頼りない分より皆で団結し、意見を出し合えた。又、6日間という長い日々の行動を共にし、妙な?連帯感と仲間意識が芽生えたと思っている。
 先頭で上手にペース配分し、いつも冷静に意見を言ってくれたサブリーダーのHTさん。陰のリーダーでした。困った時、常に的確なアドバイスをしてくれたIBさん。早目のビバーク提案は大正解でした。常に安全な行動を提案してくれたMAさん。MAさんの機転で伝付峠越えの危険を回避できました。いつもメンバーに気配っているMRさん。悪沢岳登頂の感激した顔は忘れません。
何とかこのビッグ山行が成立したことに感謝します。皆さん、どうもありがとうございました!
 
【反省と今後に向けて】

 今回の山行は多くの反省点がある。リーダーの私が超ゆるキャラでメンバーもゆるキャラが多く、せかせかしないのんびりムードが良いところではあるが、危険管理が甘いのが欠点でもある。今後のために主な事項だけ挙げてみる。
・とにかく一番の反省点はルート変更を余儀なくされたこと。伝付峠経由のルートは事前に早川町役場観光課に問い合わせ、直前情報でも問題なく通れるとのことであった。役所の情報を鵜呑みにしてしまったことが間違えで、地元観光課の人間でも山に対してはアバウトということは十分ありえる。少なくとも2方向の情報は必要だった。
・4日目のビバークは時間管理の甘さが原因で、かなりアバウトであった。リーダーがある程度押えておく必要がある。又、6年前の状況に拘り過ぎたのも問題で、状況は変化するものである。
・私自身体力の低下を考慮せず、今迄通り不用意に荷物を重くしていて(軽くする努力をしていない)、重荷が負担になっていた。もう力任せに登る年齢ではないと感ずるべき。又、急下りを考慮してストックの使用も考えるべき。
・テント設営方法については、事前に掌握しておくべきであった。
踏んだピーク 9月20日
烏帽子岳(2726m) 小河内岳(2802m)
板屋岳
9月21日
                 荒川前岳(3068m)               赤石岳(3120m)

9月22日
荒川中岳(3083m) 悪沢岳(3141m)
千枚岳(2880m) マンノー沢の頭(2515)

【塩見岳と共に】

 今回の山行では登らなかったが、展望として目の前にいつも塩見岳の姿があった。見る角度によって形を変えていたが、いつも視界にいてくれた。今回の主役は赤石岳、荒川三山であったが塩見岳も隠れた主役であった。

塩見岳
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