槍ケ岳・大喰岳・中岳 |
1.実施日: 2016年8月11日(木)-14日(日) 2.参加者: 男性4名 3.行程: 8/11: 我孫子(5:41)→(日暮里経由) 新宿(6:38/7:00スーパーあずさ1号) →松本(9:39)→松本バスターミナル(10:05/10:25) バス→ 上高地(12:20/12:45)→横尾キャンプ場着(15:50) 8/12: 起床(3:30) 横尾発(5:30)→槍沢ロッジ(7:30/7:45)→大曲(9:05/9:25)→天狗原分岐(10:40)→ 殺生ヒュッテ・テン場着(13:50) 8/13: 起床(3:30) 殺生ヒュッテ発(5:20)→槍ヶ岳山荘(6:20/6:45)→ 槍ヶ岳山頂(7:15/7:30)→槍ヶ岳山荘(8:00/8:30)→大喰岳山頂(9:10/ 9:20)→中岳山頂(10:20/10:40)→ 天狗原稜線分岐(11:50/12:10)→天狗原・氷河公園(14:25/14:40)→天狗原・分岐(15:45/15:55)→ ババ平キャンプ場着(17:30) 8/14: 起床(3:30) ババ平発(5:10)→槍沢ロッジ(5:45/5:55)→横尾(7:25/7:40)→上高地バスターミナル (11:40/12:40→松本(14:35/15:19) あずさ24号→新宿(18:05/18:15)→ 上野経由我孫子着(19:17) 4.費用: 約25,500円/名 (内訳)交通費:19,100円 (JR14,200円、バス 4,900円) 幕営料: 2,700円(横尾 700円/殺生H 1000円/ババ平 1000円) 食材費、一部外食費、ビール、燃料他約3,800円 5.装備: 夏季テント泊・縦走用一般装備 6.標高差: 約1680m、 グレードC 7.集中連絡先: IMさん |
【初日】 5時41分我孫子発。晴天で山行期間中も予報は良好である。この日は木曜日だが、今年から始まった山の日の祝日で、新宿発7時のスーパーあずさは途中駅から乗り込む人を加えて満席になった。そしてその多くが登山者だった。 松本駅からバスで上高地に向かい、昼過ぎに上高地に到着すると、バスターミナルの様子が何時もと違う。マスコミの中継車がずらっと並んで停まっており、屋台のテントもいくつか立ち並んでいた。関係者風の人に聞いてみたところ、初めての山の日の中継にきているとのことであった。 さて、初日の目的地横尾キャンプ場までの道を、HSさんを先頭に足慣らしの感じで歩き始める。焼岳・明神岳や前穂高等を眺め梓川沿いを歩くこの道は、何度歩いても気持ちの良い道だ。上高地は「神降地」という字があてられる程特別な場所との感覚は、この風景を見ればなるほど説得力がある。 横尾(1602m)には4時前に到着。夕食は標高差約1300mの急登を登る翌日に備え、栄養を取ってもらうべく用意した生ハムと梨の前菜、具沢山の豚汁、及び山では欠かせないビールだ。さわやかな高原の空気の下、全員お腹一杯になり早めに床についた。 |
横尾でトン汁 爽やかな夕刻だった |
【2日目】 3時半起床。予報通り天気は良好。出発はやや遅れて5時半。 2時間程で槍沢ロッヂ(1820m)を過ぎると本格的な登りとなる。更に快晴に恵まれて気温はぐんぐん上昇、暑さと登りとの闘いが始まった。その間翌日の幕営地ババ平(2001m)を通過する際、テン場の状況をチェックした。中心部には水場とトイレが整備されており、そばの槍沢の河原近くも含めると計50張以上は張れそうなので、翌日もスペースに問題はなかろうと思えた。 ここを過ぎると槍沢の視界が一気に広がり、日陰がほとんどない登りとなる。今回のルートでは最もキツイ登りが5時間程続く難所で、皆大汗をかきながらも隊列を整え一歩一歩進む。高山の登山経験のないTKさんも、力強い足取りで歩いている。勾配がさらに急になるのが出発後5時間程の大曲(2090m)を過ぎた頃で、このあたりから周りはお花畑になるが、日差しを遮るものは一切なくなり、暑さが直に身に応える。 小さく可憐な花が沢山咲いているのだが、あまり花を愛でる余裕もなくなり、休憩の際は水をガブ飲みしなければ収まらなくなっていた。 大曲を過ぎて2時間程、天狗原分岐を越えてしばらくすると小さな流れが現れた。山頂までの最後の水場だ。口に含むと冷たさが火照った体を冷やし、生き返る思い!まさに命の水である。皆暑さと6時間の登りで疲れがでていたのでここで大休止をとり、水分とエネルギーの補給をする事とした。 生き返ったところで、最後の登りが控えている。歩き出してすぐ、右手の山陰からひょっこりと待ち望んだ槍の穂先が現れた。槍沢ロッヂそばの樹林の間から小さい姿が見えた後、ずっと山陰に隠れていたが、大きくなった穂先が突然目の前に現れたので感激、その姿を背景に皆の写真を撮った。しかしガイドブックに「見えてからが長い」とある通り、ジグザグの道を登ってゆくが、なかなか近づかない。穂先が見えて約2時間、13時50分にやっと殺生ヒュッテ(2860m) の看板が見えこの日のゴールとなった。 テントを張り、食事前に翌日の飲料水等準備を整えた上で、早めのビールで夕食となる。 前日と同じくテント外で湯を沸かし、各種ツマミと畑さん準備のカレーとポタージュスープの夕食は早めに終了し、疲れもあって早い就寝となった。 |
槍沢ロッヂ | 大曲 ここを過ぎると登りが |
お花畑を登る ともかく暑かった | 天狗原分岐 日光を遮るものは何もない |
冷たい命の水 元気が出た | 槍の穂先が見えた |
山頂を目指し、ハイ松帯を登る | 日暮れも近い殺生ヒュッテ |
【3日目】 いよいよ槍の穂先のアタック日だ。天気は更に快晴、風も弱く絶好の日和である。 5時20分にテン場を出発し、6時20分に槍ヶ岳山荘到着。サブザックとヘルメットを準備し、6時45分頂上に向け出発。小槍を裏側から見られるポイントや、仲間の梯子登りの写真を撮ったりしながら登れる程道は空いており、途中の鎖場・梯子も無難に乗り越えて所要30分で山頂に立つことができた。FYさんから高所恐怖症の人は、梯子から下を見ない方が良いと聞いていたので、そのアドバイス通り一度も下を見ずに登り、終に憧れの山頂に立った。 山頂には15人程の人が居て夫々登頂の喜びに浸り、記念写真を撮っている。周りを見渡せば東側の大天井岳・常念岳方面は中腹まで雲海に覆われていた。しかし当日縦走予定の大喰岳・中岳とその南の穂高連峰方面や、西側飛騨方面の眺望は素晴らしく、正に絶景であった。 穂高連峰に延びる見事な稜線を写真に収め、全体の記念写真と個人写真も撮って、山頂滞在約15分で下降。槍ヶ岳山荘まで約30分で戻った。後で聞くと通常槍ヶ岳山荘からは往復60分だが、前日午後はツアー客が多く、2時間以上を要したとのこと。我々はラッキーだったのだ。 山荘で自販機の缶ジュースで登頂成功の乾杯を行い、8時30分に次の目的地 大喰岳に向かって出発した。大喰岳・中岳とも3000mを超える高峰だが、槍ヶ岳のすぐ傍にある小ぶりのピークという事で歩く人も減り、少々可哀想な山である。しかしこれらの山は、南岳から北穂高岳に続く「大キレット」への通路である一方、その山頂から槍ヶ岳が綺麗に見えるという売り物がある。 中岳を越え、氷河公園経由槍沢登山路方面への分岐点「天狗平稜線分岐」に向かうが、この道がガレ場の続く悪路、且つガスが出てきたこともあって時間がかかり、分岐到着時点で予定より約1時間の遅れが生じた。 更に分岐からの道では岩稜帯の急な下りが続き、縦走荷物を背負っては慎重に歩かざるを得ないというHSさんの適切な判断により、氷河公園到着時で更に40分の遅れが生じ、槍沢登山路合流時点では、結局予定より約2時間半の遅れとなってしまった。岩稜帯の下降に神経を使った結果、皆の疲労感が高じていたので休憩をとっていたら、韓国人登山者が数人登って来るのに出くわした。既に4時頃だが疲労感を漂わせた人が多く、この時間からどこまで登るのかと自身の遅れを棚にあげ、少々心配になった。昨年の紅葉時も感じたが、韓国人登山者が相当増えている。 そこから疲れ気味の身体で1時間程歩き、大曲を過ぎたあたりだった。山肌から清水がふんだんに湧き出す水場に出くわしたのだ。前日の登りでも通過したが、その時はまだのどの渇きもあまりなく、左程気にも留めなかった。だがこの日は違う。全員大急ぎで荷物を下ろし、キンキンの冷水を心行くまで飲んで「今日も生き返った」「ホント命の水ですね」と水場に感謝した。この水のおかげで元気を取り戻し、ババ平のテン場に着いたのは5時半、朝のテン場出発から12時間以上が経過していた。 幸い水場に近いところに適所を見つけて設営したが、遅い到着だったので、周りに気を遣いながら夕食の支度をし、食べ始めたのは6時半頃だったろうか。テン場には売店がなくこの日はビール無し。おかずはHYさんが重いのを我慢して運び上げてもらったおでんである。「おでん」にまつわる話として、昨年の荒川三山縦走の4日目に山中でビバークした際、HYさんが当日の夕食用に持って来られたパックおでんのツユが薄味だったので、皆の飲料水が残り少なかった中、それを水代りに飲むことができて助かったという話でひと時盛り上がった。この時のことは鮮明に記憶に残っているが、山で「水」は本当に重要という事を身に染みて感じさせてくれた思い出だ。 そして、この日も水のあり難さが身に染みた1日だった。 【最終日】 この日も晴天。横尾-徳澤-明神を経て上高地自然探勝道経由上高地に向かう。既に厳しい道は終えているので気分は楽だ。徳澤園でソフトクリームを食べ、自然探勝道ではサルの群れと遭遇した。皆ゆったりとした気持で槍ヶ岳の余韻を楽しみながら歩き、上高地には11時40分に到着。 ところが上高地の人出の少なさに驚いた。昨年10月紅葉の頃の1/3に満たない程だ。すぐバスの切符売り場に行き切符と整理券を買うが、なんと12時40分のバスに乗れるとのこと。お盆休み終盤で帰る人も多い筈だから、相当混雑するとの予想は見事に外れ、拍子抜けしてしまった。 直に切符売り場の2階の食堂で昼食をとってバスに乗り、松本には14時35分着。 予定より約2時間早いあずさの自由席に乗れ、我孫子には19時過ぎに帰着した。 4日間好天に恵まれ、終に憧れの槍ヶ岳山頂を踏み、皆で360度の絶景を堪能した。 全員が良くまとまって無事山行を完遂できたことに対し、今回参加頂いた皆さまに感謝申し上げます。
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モルゲンロートの槍ヶ岳 | 朝日を浴びて山頂目指し出発 |
槍ヶ岳山荘のテラス 穂先と小槍が見える | 山頂アタック前 |
穂先への岩場を登る | 小槍 後方に飛騨方面の山並み |
槍ヶ岳登頂 | 山頂から見た東鎌尾根 右下に殺生ヒュッテ |
登頂成功を祝して乾杯 | 飛騨乗越から槍ヶ岳を望む |
大喰岳山頂から見た槍ヶ岳 | 南岳手前、天狗原稜線分岐 |
天狗原へは急な岩場の下りが続く | 氷河公園の天狗池 逆さ槍は見えなかった |
明神橋まで戻った | さる |
3年前に山を始めるずっと前から、槍ヶ岳は憧れの山であった。その名前は日本を代表する山の一つとして昔から知っていたが、37年前の夏、初めて登った奥穂高岳の山頂から眺めた北アルプスの山々の中で、同行の友人がひと際目立つとんがった山を示し「あれが槍ヶ岳だ」と言った時から、私の憧れは始まっていたように思う。 力量不足な自分がリーダーをやる事は少々重荷であったが、念願が叶い槍ヶ岳に行けることは素直に嬉しかった。 今回のメンバーはHSさん、FYさんの気心の知れたお二人と、TKさんの計4名である。 TKさんは初めてのテント泊且つ初めての3000m峰挑戦という事で、少々心配されていたが、これまでの同行の経験でも体力は十分だし、危険と思える箇所も左程ないので問題はないと思われた。初縦走に備え、事前にテント泊用装備を購入され、気合十分で当日に臨まれたのである。 |