ペルーアンデス最高峰 ワスカラン登山記                  (2013年7月21日~8月15日)

ムショ村(3,100m)からのワスカラン山(左側が北峰6,655m、右側が南峰6,768m)



日程:2013年7月21日~8月15日(26日間)
参加者:男性5名、女性2名

日程表:前半1前半2後半1後半2

まえがき
心の中で、一度は登ってみたい願望があった海外の山、我孫子山の会在籍の縁で昨年の年末にワスカランに行く事を決定。その後、「ワスカラン」の映像や写真を見ると、そこには今までに国内で登った山と全く次元が違う印象を受ける。{異国の海外である事、高所での登山である事(酸素は平地の半分以下、高さ6768mの雪山、多くのクレバス帯、セラックといわれる氷の塔が存在している)、山のスケールが大きい事(ペルーアンデスの最高峰)、未知の事が多すぎる。}これらの困難を克服して、はたして今の自分が登れるのかという不安が正直ありました。其の大きな不安を打ち消したのは同行の仲間(ガイドの倉岡さん、tさん、kさん、fさん、nさん、iさん)の存在でした。最初から出発前まで合計7回の事前打合せ(ガイドの倉岡さんからのいろいろな説明、他の人の質問他)、(tさん中心に細かくそれを記録、書類の作成、伝達、翻訳)が行われ、7人がワスカランに行くための情報を共有化出来ました。同時に同行する7人のコミュニケーションも良く図ることが出来、出発前には大きな不安は解消出来ました。そして「心の宝物」を見つける山旅に出発しました。

□所感
1. 疲れはしましたが、海外での26日間の長きにわたる山旅で、全員無事に帰国出来たことは、隊として先ずは成功したと思います。又、いろんな意味で同行の皆様が26日間を通して,各自が自分の行動の中で経験したこと、気付いたことは多かったと思われます。これは貴重な体験だと思います。そういう面で心が豊かになったような気がします。ワスカランの目標達成は天候、優秀な日本人ガイドの倉岡さん、日本からの同行の仲間(全体を常に気配りされ行動されるtさん、語学力、会計で活躍されたkさん、気力が有り、粘り強かったnさん、笑顔を振りまき足腰が強かったfさん、海外登山の経験が多いiさん)、現地ガイド(参加者をサポートして、安全に、安心して頂上に立っていただこうとする気迫が感じられる。)、コック(力の源になる食事)、ポーター(気は優しくて力持ち)、現地の山行管理会社(女性社長の部下に対しての教育が素晴らしい)、の援助のお蔭だと思います。そしてその時の自分の体調、気力、体力、技術等すべてが整わないと達成できませんでした。皆さんどうも有難うございました。
2.海外の山を実際に経験することにより、高山の素晴らしさを知り、海外の山に興味を持つことが出来る。見聞を広めることも大事である。一方で海外の登山を経験することにより、角度を変えて外側から国内の山の良さが見えてくる。国内の山も前向きに行動したいと思う。 今後山をやっていく上で、今回の山旅で確認したことは優れたクライミング技術にしても、安定的な雪山登高能力にしても、確実な「歩く力」なしには意味を持たないということだ。ロングルートを登るには先ずは冷静に行動出来る基礎体力が必要だ。その意味で、色々な種類の登山をしていく上で基本的に大事なのは、「歩けて」、「荷物が持てて」、「どこでも不安なく泊まれて」という能力が必要である。
                                  

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 ◇7月
2122  1日目、2日目  羽田~シアトル~アトランタ~リマ

21日我孫子発20時3分発で出発。21時30分羽田空港国際ターミナル参加者全員集合、荷物整理、22時30分デルタ航空チェックイン、22日1時30分羽田発DL580便、21日18時45シアトル着、シアトル泊、22日7時45分シアトル発DL968便、15時26分アトランタ着、17時10分アトランタ発DL151便、22時45分リマ着。

◇7月23日 ・3日目 リマ~ワラス 

空港近くのラマダホテルに午前1時前に到着、口あたりの良いペルーのお酒、ピスコサワーを頂き休む。6時起床、7時35分ホテル出発、バスにて北へ約400km入り、アンデスの山懐に抱かれた高原の町(3051m)ワラスに向かう。首都リマ出発後、少し経過して、バスの車窓から草木も生えていないボタ山の上にみすぼらしいバラックが長く続く風景が目に入り、ペルーの厳しい一面を見る。高速道路で、スケールの大きい砂漠、乾燥地帯を通り、海岸通りに出て、昼食(イカ、セビッチェー[白身魚]他、ビール)。バスは北へ進みワラス方面の分岐点で国道と別れワラスに向かう。途中、広大な大平原でワイワッシュ山群のイエルパパー6635m(ペルー第2の高峰)が見える。又ワラスの町が近づくにつれ、ワスカランが段々大きな姿になってくる。田舎の田園風景を見ながら少し進むとワラスの町に入りホテル、コロンバに着く。今回はこのホテルで合計9泊する。


◇7月24日  ・4日目 ワラス~チュウルップレイク~ワラス 高所順応トレッキング

行動前半の最初の3日間は軽くトレッキング(チュルップレイク4450m,パストルリ氷河5200m、プンタオリンピカ4890m)で5000m前後まで行き、ゆったりとしたトレッキングで身体を高度に順応させる狙いがあった。本日のチュルップレイクヘのトレッキング、700m登って、700m下るコースでしたが、初めて4000m越える高所に、少し体が重い感じがする。しかし4000m越える場所に立てたことに喜びを感じる。山岳景色の中にバランス良く存在する湖。この標高でこれだけ美しい自然が残っていることに驚く。


◇7月25日 ・5日目 ワラス~パストルリ氷河~ワラス 高所順応トレッキング


5000mまで車で行き、小雪が少し降る中、氷河に向かって歩き出す。パストリル氷河は何万年も前からそこにあった氷の岩なのだ。手を触れてみると、しんからかちかちに凍った氷だった。そして巨大で奇妙な形をした氷河帯であった。又この日は車の行き帰りに、高さ10m以上にもなる世界最大の高山植物プヤ・ライモンディ(パイナップルの仲間){100年間生き続け100年目に一回花を咲かせて死ぬことから別名を「センチュリープラント」と呼ばれている}を見ることが出来た。


◇7月26日 ・6日目 ワラス~プンタオリンピカ~カルワス 高所順応トレッキング


車は高度4890mのプンタオリンピカというワスカランを横から眺められる地点に向かって高度を上げて行く。上部が雪のワスカランの姿が大きく見える。眼前に現れると山のデッカさ、凄さを感じる。又周りには「コルディエラ・ブランカ」と呼ばれるブランカ山群が連なり、今までに見たことのない迫力があり、美しい雪の山岳風景を見ることが出来、幸せを感じる。明日からの登山に備えカルワスという田舎町のホテルに向かう。

◇7月27日 ・7日目 カルワス~パシパ~イシンカBC 高所順応登山


本日より登山スタート、8時15分にカルワスのホテルを出発し、イシンカBCの出発地点であるパシパという所で、馬が放牧されており、穏やかで、広大な大地に到着する。この場所にて、我々登山隊は車を降り、登山の準備をする。登山用具、調理器具他をロバにポーターが載せる。ガイドの倉岡さんと現地ガイド2人とポーター、コック、ロバ引き、計10数人で我々6人を登山する上で、いろいろな面でサポートしてくれる。 
   イシンカ谷を通りイシンカBCへ行く途中、川のせせらぎが気持ちよく聞こえる絶好の場所にて昼食。ここで驚いたのは、今まで登山服を身に着けていたコックが本物のコックの服装、帽子の姿で調理し、我々に食事を配ってくれたことでした。山中で気持ちよく食事をしてもらいたいという気配りの、サービス精神に感動する。又氷河からの豊富な水により、たんぽぽのような黄色い高山植物が群生していた。イシンカ谷の荒々しい頂上部岩壁の景観も見事で、過去に見たことのない大自然の迫力を感じる。ようやくトクヤラフの神々しい尖った峰が見えてきた。PM4時10分イシンカBC着。テントは既にポーターにより張られていました。ベースキャンプは贅沢に1人に対してテント1張りが与えられる。


◇7月28日  ・8日目 イシンカBCで休養日


ガイドの倉岡さんが隊の全体を見て、今後の登山の状況を考えて提案され、皆様の同意を得て、予定変更し、本日休養日となる。このイシンカBCは今回のワスカラン山行キャンプ地として最も好きなキャンプ地であった。広く平らな牧草地には馬が放牧されおり、周りがウルス、トクヤラフ等の山に囲まれており、眺めは山岳方面からキャンプ場を見ても、又キャンプ場からいろいろと360度、角度を変えて、山岳方面を見ても素晴らしい。すぐ近くに小川も流れており、キャンプするのに最適の場所だった。自由行動ということで、無理しない程度にAMはトクヤラフの方面、PMは明日登るウルスがよく見えるところまでトレッキングを行い、のんびりと過ごす。

◇7月29日  ・9日目 イシンカBC~ウルス~イシンカBC 高所順応登山

ウルスルート

ワスカランに登るための訓練として、プレ山行として登山がスタート、5500m前後の山(ウルス5,495m,イシンカ5,530m)をイシンカBC、イシンカC1にてキャンプをして2つの山に登る。高度順応していく山と言いましても5000mを超えている山、厳しさが予想される。初めての高所登山ウルスは日帰りで高低差約1200mを登って1200m下るコース、さらに上部は傾斜がきつく雪道である。初めての経験であるが、本日はAM0.30に食事しAM2:00に暗闇の中ヘッドランプを付けて出発する。途中約1時間登る毎に安全な場所で休憩する。又雪道からはアイゼン、ピッケル、ハーネスを装着し、ザイルで固定される、1人はガイド(倉岡さん、現地ガイド)他は参加者で構成される。この日は現地ガイドリーダのアグリピーノさんが先頭でtさん、iさんが続いてスタートする。暗闇の中ヘッドランプの明かりをたよりに登って行く。途中、ガイドの倉岡さんが我々を追い抜いて駆け足で登って行く。姿は見えないけれどヘッドランプの明かりの動きが普通の動きと違い、非常に速く上部に動いている。何かあったのかと思いながら登って行くと暗闇の中で写真撮影をセットされて、我々を待ちかまえ、写真を撮られました。私はヘッドランプの異常な速い動きを見て、さすが、エベレストを6回も登られているクライマーだなと足腰の強さを見て感じました。6時過ぎ、薄明りの中、ウルスの尖った頂上が見えてくる。危険個所は少なかったが、5000mを超える雪山の初めての経験。心臓、肺の動きが高所により少し影響したように感じる。8時40分頂上に。頂上で皆さんと握手しお互いに達成を喜び合い。その後写真撮影する。頂上からの眺めは最高、トクヤラフ、イシンカの姿が、はっきりと、大きく見える。その後ゆっくりとBCに下山する。夕食の席でガイドの倉岡さんの提案で、隊の全体を見て今後の登山の状況を考えて、トクヤラフ山行予定を変更し、イシンカに登る事を参加者の意見を聞かれて決定する。


◇7月30日 ・10日目 イシンカBC~イシンカC1 高所順応登山 

イシンカルート図 (イシンカの右の山はRanrapalca;6162m)

 本日はイシンカC1(4900m)に向けて標高差600mを登って行くコース。10時に出発する。大平原で左を見ても、右を見ても断崖、絶壁、後方にウルス、前方にイシンカ、氷河を直視しながら進んでいく。紺碧の空の下、そよ風に吹かれ非常に気持ちよく感じられる。おまけにウルスで5500mの登山に成功したことが先の登山に対して少し自信となる。眺望の良い小川のほとりで昼食をとる。13時45分イシンカC1に到着。テントのすぐ上は、色の綺麗な氷河湖である。周りの風景と、よくマッチしていた。18時イシンカは夕日を浴びて輝いていた。明日に備えて早めに寝袋に入る。






◇7月31日  ・11日目 イシンカC1~イシンカ~イシンカBC 高所順応登山


AM1時起床、食事、真っ暗な中、ヘッドランプの明かりをたよりに、3時出発、雪道に入る手前で雪山装備を装着し、ザイルを固定する。このころになると4000mの高度には大部慣れてくるが、傾斜のきつい登りになると大きく空気を吸い、空気を吐き出しながら一歩一歩、登って行く。7時10分雪面が鋭くギザギザに尖った形をした広い斜面の下で一同休息。このギザギザの形をした傾斜のある雪道を先頭のアグリピーノさん、上手にルートファインディングしながら雪道を切り開いていました。ガイドの力量を感じる。9時20分イシンカ山頂に到着。歓喜の声を上げる。参加者全員がイシンカ頂上を極めることが出来たことは非常に素晴らしいことである。隊全体のムードも良くなる。頂上から眺める360度の山岳風景は言葉で表現できない位に美しい。イシンカのピークは北側に傾いていて、南側はすぱっと切れ落ちている。動き回る場合に、神経を使う。暫く頂上で高度感タップリのブランカ山群の見事な山岳風景に浸る。写真を撮影してBCまで下る。15時30分イシンカBCに到着。17時ガイド、ポーター、参加者全員でビールにてイシンカ登山達成の祝杯を挙げる。










◇8月 1日  ・12日目 イシンカBC~ワラス 高所順応登山


4日間キャンプを行い、想い出の詰まったイシンカベースキャンプを引き払い、9時15分出発点パシパに向かう。途中ペルーの親子づれに出会う。小学生位の子供がイシンカに登る話を聞く。自分もその話を聞き、力をもらい、是非ワスカランを達成させたい気持ちになる。樹林帯を抜け、馬、牛を放牧している大草原の景色を見ながら、ゆったりと、昼食を取る。食事の途中に我々の荷物等を積んだロバの群れが通り過ぎる。14時20分出発点のパシパに着く近隣に住んでいるポーターの家族がポーターを迎えに来ていた。荷物をバスに積み込み一路ワラスのコロンバホテルに向かう、今日から3日間ワラスのコロンバホテルに滞在し、休養して、いよいよ8月4日よりワスカランに向かう。



◇8月 2日   ・13日目 休養日

本日休養日、AM洗濯、整理、参加者全員でワラスの町に出て昼食(ワラスクリエドセビチリアにて)。海鮮料理を注文すると、量の多さにびっくりだが、味は良い。周りのペルー人を見渡すと凄い量の食事をしている人が多い。その影響か知りませんが中高年以上の人に肥満体が多い。街の土産物市場を散策して、購入。その後カフェアンディノに行く。2階、3階の窓から周りの山岳風景がはっきりと見え、又、店内の家具、調度品にも感覚の良いセンスを感じる。この店は外国人客の利用が目立つ。のんびりと1日を過ごす。


◇8月 3日  ・14日目 休養日  


希望者だけで午前中、川沿いの温泉に行く。土曜日ということで地元のペルー人で賑わっていました。ホテルはシャワーのみですので、久しぶりに温泉のお湯に浸かり気分爽快になる。昼食はカフェアンディノに行き昼食を取る。その後ホテルにて荷物の整理し明日のワスカラン行きの準備をし、夜に、再び外出しシエラトリビエにてワイン煮の魚注文し非常に美味しく頂く。


◇8月 4日  ・晴れ15日目 後半ワスカラン登山1日目 ワラス~ムーショ~ワスカランBC

 ワスカランルート図   

ワラスから北北西へ50Kmムーショ村に向けて8時30分バス出発。レンガ作りの家並みと荒涼とした岩間の間に点々と草木が並ぶ広大な山林風景がすぐに広がる。進行方向前面に大きなワスカランの姿が見える。途中で右折し、田舎のデコボコ道を登って行くと左手に徐々にワスカランが大きく迫ってくる。9時52分ムーショ村着。村から正面に巨大なお椀を2個伏せたようワスカランが見える。まだ日差しが強く、日陰に入ると気持が良い。ロバにガイド、ポーターが登山用具、食事用具他を載せて10時35分ベースキャンプに向けて出発。熱帯のため気温は30度位に感じ、日差しが強い。ベースキャンプまで標高差1150m。ユーカリの林を通り抜け、あまり高くない灌木の間を歩く。途中日影は無く、休みを取りながらゆっくりと登っていく。ときには小川のせせらぎを聞きながら歩く。斜面の勾配はさほどきつくはないが、空気中の酸素は確実に少なくなっている。1時5分見晴らしの良い岩の上で、眼下に緑豊かな田園風景を見ながら昼食。その後高原にて3時15分休憩。漸く4時25分にワスカランBCに到着。テントはポーターにより既に張られていました。BCキャンプは贅沢に1人に1張りのテントが与えられる。イシンカBCより日が長いため少しゆっくりして、7時30分より食堂にて夕食。夜になるとワラス、ユンガイの町の明かりがはっきりと輝く。

◇8月 5日   ・晴れ16日目 登山2日目 ワスカランBC~モレナキャンプ


ベースキャンプからは草木も生えない岩場が続く、かつては氷河に覆われていたこのあたりは岩が氷河に磨かれてつるつるの状態。滑らないような歩き方で岩場を登っていく。大きな岩、沢を渡り、時には厳しい岩の上りも有り、クライミングするような気持ちでゆっくりのペースで登る。下界の山村風景が登るに従い小さくなっていく。紫色のタウリという名の花が力強く咲いている。少し心が和む。12時、岩間で雲の中のワスカランが見える丘で休憩。さらに平らなスラブ状の岩の上を延々とトラバース気味に右方向に登って行く。暫く行くと綺麗で頑丈な高台にあるモレナ小屋に1時15分に到着。モレナ小屋から見たワスカランは、より大きく見える。ペルー政府の調査によるとこの山域では過去30年で氷河が27%も縮小したという。1時30分モレナキャンプ到着。岩の間に既にテントが建てられていました。2人で1張りのテントが与えられる。トイレもポーターが作ってくれる。何から何まで有り難い事だ。ポーターの力を借りないと高度6000m以上の登山は無理と分かる。ワスカランを眺めると、もう少しで氷河の末端になる。3時に自由時間が有ったので、氷河の近くまで散策。4時、川のせせらぎを聞きながらお茶の時間。5時30分まだ日差しが強く、空の色が紺碧の中、夕食を済ませ明日のために体を休める。 

◇8月 6日  ・晴れ17日目 登山3日目 モレナキャンプ~ワスカランC1


6時過ぎトイレ排便する。自分の健康管理上、ペル―に来て一番気を付けるべきこととして適量食べて(現実は食べ過ぎのきらいがある)、運動して、排便を毎日することを意識してきました。今日も非常に厳しい暑さ。7時30までに登山用具提出。7時30分お茶、8時食事、9時40分、はっきりとワスカラン北方、南方が見える中、キャンプC1に向けて出発。10時55分氷河の末端に到着。アイゼン、ピッケル、ハーネス、等の雪山用具装着し冬靴に履き替える。いよいよ雪山の上り、ロープを3人で結び我々チーム(アグリピーノさん、h、iさん)が最初に登る。時々クレバス現れ、それを避けながら、ピッケル、ストックを使いアイゼンの爪を氷の斜面に利かせながら一歩一歩登って行く。PM2時10分C1キャンプ5200mに到着。下界よりも増して大きな姿となって眼前に現れるワスカラン上部の白い山塊を見て感動する。こういう場所で非常に有り難いのが食事である。ワスカラン山行では必ずコックさんが同行して毎食(例外を除いて)作ってくれる.その時の状況により、食堂で食べたり、外で食べたり、テントまで食事を運んでくれたりする。場所により、日により違いますが、内容も良く(スープ、メインの芋類、ライス、麺類、野菜入り鶏肉料理等、デザート)、異国のこういう厳しい山腹で頂くと幸せな気持ちになり力の源となる。時間経過後の夕日も実に美しい。


◇8月 7日  ・晴れ 18日目 登山4日目 ワスカランC1~ワスカランC2


4時30分,真冬の雪山用具装着にて3名で1グループになりザイルで固定される、1人はガイド(倉岡さん、現地ガイド)他2名は参加者で構成される。この日は現地ガイドリーダのアグリピーノさんが先頭でh、iさんが先頭グループでスタートする。暗闇の中ヘッドランプの明かりをたよりにキャンプC2(5900m)ガルガンダのコルに向かって出発。日が登って暖かくなり氷の状態が不安定になる前にクレバス帯を抜けるためだ。ヘッドランプの明かりをたよりに進む。夜が明け周辺が見えるようになると、ここがワスカラン最大の難所のひとつである事が分る。ベースキャンプまでの穏やかなワスカランの風景が一転し、凄さを増す。あたり一面のクレバス帯、口を開けて待っている。いつ崩れ落ちるか分らないスノーブリッジを慎重に渡る。雪の状態は日々変わる。ルートを選びながら登って行く。クレバスの次に現れたのはセラックと呼ばれる氷の塔。セラック帯に入ると一段と傾斜がきつくなる。セラックも暖かくなると崩壊の危険がある。緊張が続く上り。一歩一歩アイゼンを雪面に着地させながら登って行く。太陽が顔をのぞかせた頃には無事危険個所を通過。セラック帯を抜け、ガルガンタのコルの末端に向けて登って行く。9時にC2(5900m)着。今まで経験した事の無い高さで、氷河の大きさ、形、周りの山岳風景、空気を5感で感じる。凄い・・・美しい・・・厳しい・・・。C1~C2標高差700mの高度差で、これだけ周りの風景が違うのか。2時10分、明日に備えてC2~頂上に登るための訓練(高度順応も兼ねて)。ガイドの倉岡さんが音頭を取り行う。上の方もクレバスの連続。明日の真夜中の登り、余程気をつけて登らなくては。我々の仲間に体調不良者も出て、全体的に疲れ気味である。本日は明日に備えて早く休む。


◇8月 8日   ・晴れ19日目 登山5日目ワスカランC2~ワスカラン登頂~ワスカランC2


本日の頂上までの上り868m,下り868m,初めての6000mを越える領域にこれから入っていく。PM11時お茶、食事 AM1時出発、凍て付く寒さの中ヘッドランプの明かりをたよりにピッケル、ストックを両手で持ち、雪の斜面に突き差しアイゼンを雪面にきっちり利かせながら一歩一歩登っていく。ヘッドランプの列が続く。本日はサブリーダーのウィルダーさんが私のガイド役で、メンバーの最後でスタートする。途中で急に進行方向を転換して踏み後のない、非常に急な斜面を直登する場面がありました。そして進行方向にヘッドランプの明かりの一帯が見えなくなりました。このルートは傾斜が厳しく、登るのに非常に苦労する。後で分かったことですが、これはウィルダーさんの判断で、先に登っていったグループを抜かすために同じルートではなく、別ルートを取る。そこは、踏みあとは無く、傾斜が非常にきついので、必死にピッケルを凍った雪面に打ち込み、手で自分の体を引き上げながら、左右の足のアイゼンを凍った雪面の上部に左、右と利かせながら手足を使って登って行く。この動作を繰り返しながら登って行く。暫くこの時間帯が続く。振り返れば、高度も6000mを超えており、足を一歩一歩上に上げるのが重くなる、私にとってワスカラン登山の中で一番厳しい時間帯であった。ようやく先頭のリーダー、アグリピーノさん、iさんグループに追いつく。その後途中にクレバスが多く存在し,それを避けながら登っていく。風が厳しく、温度が下がる。夜明け前ワスカラン北方と同じ位の高さまで来る。暫くすると、アンデスの山々が朝日に染まり、段々と周りが明るくなり夜が明ける。標高6000mを超えた高さまで登ってくると酸素は平地の半分以下になり動作ひとつにも息が切れる。最後の緩い斜面を登りきるとそこには平らな雪源が広がっていた。8時20分頂上に到着。ウィルダーさん、アグリピーノさん、iさん、サブのペルー人と抱き合い、握手する。360度の大パノラマが我々を祝福するように輝いて見えていた。歓喜の声を上げ、周りを見渡し、ワンドイ、ピスコ、チャクララフ、チョピカルキ他5000m~6000mの山々が見渡すかぎり下に見える。写真を撮影する。登頂に成功した喜びで、思わずガッポーズする。地元ではアンデスのグレートサミッツを制覇した人を尊敬の念を込めて「アンディニスタ」というそうだ。「アンディニスタの世界へ、ようこそ!」と言いたげなガイドの喜びよう、笑顔は輝き、誇らしげだった。8時40分下山。下山はより慎重になるが、周りが明るいので、ワスカランから見下ろす白き山々の素晴らしき容姿を堪能し、ポイントで写真撮影をする。下山途中で出会ったkさんにエールを送り、頑張ってくださいと声をかける。その時初めてtさんが登ってないことを聞かされ心配になる。下りでは、上部でロープを固定して、ロープを握りながらの氷河の下り、何時崩れてもおかしくないスノウブリッジの通過、緊張感の中、無事通過しC2に戻り、待機していたtさん、fさんと握手。本日の体調が万全でなかったので、漸くほっとする。少しテントの中で休憩後到着したkさんを出迎える。大変お疲れさまでした。今日は記念すべき一日になった。







◇8月 9日  ・晴れ後曇り20日目 登山6日目 ワスカランC2~ワスカランBC


6時過ぎに出発、今日は下りの長丁場、一気にBCまで下る。本日は非常に寒い。夜が明けているのではっきりと、あちこちのクレバスを左右に確認しながら下って行く。下りから見ると、時には上りと違った風景を感じる。しかし凄いところを登ってきたなあ・・・。自然のダイナミックな造形美に見とれながら、下って行く。モレナキャンプ手前の雪原で3人(ガイドの倉岡さん、h、iさん)が、行き止る。倉岡さん、絶壁の約50メートルの瀧を降りる為に、その上でピッケル3本を雪の中に打ち込みシュリンゲでピッケルを繋ぎ固定して、そこにロープを通し瀧の下にロープを垂らす。hさんから降りてください。エエーこの瀧をロープを伝って降りるの・・・と、一瞬びくっとする。腹を決めてロープをしっかりと握り、慎重に降りていく。降りる途中ロープが少し左右に動くが、何とか下の地面に着地できる。どこかで下る道を間違えたため、50メートルの瀧下りを経験出来た事は有り難かった。その下までポーターが用具を持って来ていただきアイゼン、ハーネスを外し、トレッキングシューズに履き替え、ストックで下っていく。下山で標高が低くなるに従い調子が出てくる。もうすぐモレナキャンプ、そこで素晴らしい風景を見ながら岩の上で食事。岩の合間を下って行くと、途中に岩の間から水が流れてとても感じの良いところを通過して、その先の平たい大きな岩に大の字になって、青い大きな空を見ながら寝そべる、非常に気持の良い時間である。ベースキャンプに着き、コックさんが頑張ってBCキャンプ最後の下界で食べるような豪華な夕食を頂く。


◇8月10日  ・21日目 登山7日目 ワスカランBC~毛染工場~ワラス


10時BC地から数々の思い出を胸にムーショ村に下って行く。下界が段々大きくなっていく。去り行くワスカランを振り返るとワスカランの岩場は見えるけれど上部は雲の中。さらに静かな山村風景を楽しみながら、空気を感じながら、さらに下っていく。途中、羊、ブタ等の家畜が放牧され、昔、子供のころ育った故郷を思い出す。12時20分ムーショ村に到着。荷物をロバから降ろし車に積み替える。ここでこの近辺に住んでいるポーターと別れる。ムーショ村にて昼食して出発する。15時アルパカの原糸を織り、販売している民芸加工工場に立ち寄る。途中に車がオーバーヒートし、約1時間後やってきた別の車でワラスの町に戻る。土曜日だったので帰路の途中、町の祭りに出会う。原色の民族衣装を着た大勢の人が楽器(太鼓、トランペット)の演奏で踊っている。しばらくバスは停止させられる。夜ホテルに近いピザの専門店に行きピザの作る様子を見ながらペルーワインを頂く。

◇8月11日22日目 ワラス滞在 ベロニカ宅


AM本日ホテルにてゆっくり休養して10時過ぎワラスの町に土産物を買いに行く。からっと晴れた日曜日の町の風景は夜と違って穏やかだった。歩行者天国も有り、真ん中で若者がバレーボールをしていた。市内のあちら、こちらから眺められる山々も素晴らしい表情を見せていました。午後1時20分、現地のガイド、ポーターを管理している会社の女性社長ベロニカさんの招待を受け、社長宅の大きな庭園を訪問する。この地方で伝えられてきた伝統的な料理方法(パチャマンカ)、料理で歓迎される。沢山の焼かれた石で竈を作り、その中に、食材にする色々な種類のイモ、アルミホイルで包んだ、ブタ、鳥の肉を入れ、石を囲み、その上に葉っぱを被せ、ゴザを被せ、その上に土を乗せて約30分待つと料理が出来る。ビール等で乾杯、多くの野菜が並べられ、お皿に載せられたアルミホイルを開くと食べきれない量のブタ、鳥の肉、芋が入っていました。味は非常に良く、特に芋類は非常に美味しかった。又フォルクローレの演奏と踊りで打ち上げの宴は非常に盛り上がる。最後に大変お世話になったガイド、ポーターとも別れる。大変お世話になりました。


郷土料理「PACHAMANCA パチャマンカ」。PACHA(パチャ)は「大地」、 MANCA(マンカ)は「鍋」という意味で、「大地の鍋」という名の料理。


◇8月12日23日目 ワラス~ヤンガヌコ峠~ワラス


本日は、観光名所として有名なヤンガヌコ峠(4767m)向けて車はホテルを8時に出発する。大地震でワスカランの土石流で町が崩壊したユンガイの町を通り、ヤンガヌコ谷を車は大きく左右に揺れながら目的地に向かう。途中、左右絶壁で囲まれたエメラルド色の氷河湖(男池)を見物し写真撮影をする。実に視界に入る。湖と絶壁を含む景色全体が非常に美しい、上のヤンガヌコ峠近くから下の氷河湖を見た風景も、他では見られない非常にバランス(エメラルド色の氷河湖と絶壁)の良い眺望である。高度が上るにつれ雪が残る山道を更に上りヤンガヌコ峠に着く。期待通り、ペルーアンデスのブランカ山群の最高峰ワスカラン(6768m)、4つのピークを持つワンドイ(6395m)、ピスコ(5752m)、双子峰を持つチャクララフ(6112m)、チョピカルキ(6354m)が目の前に大きく、はっきりと眺望出来る。これだけ特色のある高山が並ぶ姿は迫力満点、それらの山を美しく盛り上げているのは、山自体の姿もそうですが,視界の中に含まれる景色全体です。大満足し写真撮影する。PM5時前にホテルコロンバに着く。ワラス滞在最後の夜、ホテル近くのレストランにてペルーワインで乾杯し、ワラスの町の名残を惜しむ。


「Campo Santo Yungay (ユンガイ慰霊公園) 」、1970年5月31日。 M7.8のアンカッシュ地震。 死者・行方不明者約7万人。 その中でもこのユンガイは、もっとも悲惨な被害を受けた。ワスカランの麓にあったこの町。 地震でワスカラン北峰の氷河が大崩落、 大量の土砂と雪が、時速300km、約3分でユンガイの町を襲った。


◇8月13日24日目 ワラス~リマ


・8時20分見送りに来られたベロニカさん、コロンボホテルに別れを告げ一路バスはリマに向かう。一度4000mの山岳地帯に上って、そこから下って行く。車道から眺めるワスカランの姿が段々と小さくなると感傷的な気分になる。リマに入ると日本企業の看板が目につく。最後の夕食は海の上に浮かぶレストラン「La Rosa Nautica」にて頂く。ペルーで初めて見る丘の上の高級マンション街、海岸通りに長く連なっている。貧富の差が大きい事を感じる。その後リマタコマ空港にて、見送りの現地ガイドリーダー アグリピーノさんに別れを告げる。大変お世話になりました。チェックインして飛行機に乗り込む。


 8月14日 ・25日目 リマ~アトランタ
リマ発DL150便少し遅れ出発、8時4分アトラン着、13時45分アトランタ発DL295便、少し遅れ出発。


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8月15日 ・26日目 アトランタ~成田
機内よりロッキー山脈の山並を眺望する。16時25分成田空港着。           h記




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