四季折々の山に登るにあたり、必要な装備は個人で準備しなければなりません。そんなときに参考にしていただけたらと、日帰り山行と宿泊山行の別に、個人の装備品目をリストにまとめました。 なお、日帰り山行でも、季節や登る山によって装備はかなり異なります。宿泊山行も、小屋泊り山行かテント(泊)山行かで大きく変わります。ここでは、装備に関する大まかな考え方、選ぶ要領などと、基本・基準となる装備品目を一覧し、適宜、適応(要否)項目を加えました。山行計画作成時、装備のチェック時にお使いください。 なお、以下では、宿泊山行の装備は「テント泊」を前提にしていることをお断りしておきます。 =2015/10 KMおよびHM(担当) |
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①着衣 |
No. | 装備品名 | 摘要 | 日帰り山行 | 宿泊山行 | ||
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無雪期 | 有雪期 | 無雪期 | 有雪期 | |||
1 | 長袖シャツ(1) | 薄地 | 〇 | |||
2 | 長袖シャツ(2) | 中厚地 | 〇 | |||
3 | 下着(1)―(上)半袖 | 速乾性素材製品(T/ポロシャツ) | 〇 | 〇 | ||
4 | 下着(2)―(上)長袖 | 冬用、ウール(毛)か化学繊維 | 〇 | 〇 | ||
5 | 下着(3)―(下) | 冬用、タイツ型 | △ | 〇 | ||
6 | 靴下(1) | 超薄地(内側に履く)* | △ | △ | △ | △ |
7 | 靴下(2) | 中厚地、速乾性素材かウール | 〇 | 〇 | ||
8 | 靴下(3) | 厚地、ウールか速乾性素材 | 〇 | 〇 | ||
9 | 帽子(1) | 薄地(日よけ用) | 〇 | 〇 | ||
10 | 帽子(2) | 厚地(防寒用) | 〇 | 〇 | ||
11 | 帽子(3) | 厳冬期の目出帽+高所帽 | △ | 〇 | ||
12 | 手袋(1) | 薄地~軍手 | 〇 | 〇 | ||
13 | 手袋(2) | 厚地(防寒用)、ウール | 〇 | 〇 | ||
14 | 手袋(3) | 厳冬期用、オーバー手袋付き | △ | 〇 | ||
15 | 長ズボン(1) | 薄地、ゆったり目のもの | 〇 | 〇 | ||
16 | 長ズボン(2) | 裏地付きの厚地のもの | 〇 | 〇 | ||
17 | 長ズボン(3) | 厳冬期のオーバーズボン** | △ | △ | ||
18 | 半ズボン | △ | △ | |||
19 | 防寒着(1) | 薄地のフリース・セーター | 〇 | △ | 〇 | |
20 | 防寒着(2) | 厚地のフリーズ、ダウン(羽毛)着 | 〇 | 〇 | ||
21 | 防寒着(3) | ウィンドブレーカー(ヤッケ、アノラック)** | △ | △ | ||
22 | 雨具 | ゴアテックス製品(防水・防風・防寒兼用) | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 |
23 | 着替え | 1組(下着、靴下、手袋)、かさばらないもの | △ | △ | 〇 | 〇 |
*:紳士用または女性用超薄地の靴下を下に履くと、靴ずれ防止にかなり効果があります。 **:ほとんどの場合、上下とも雨具で代用できます。 |
②行動用具―(1)一般行動用 |
No. | 装備品名 | 摘要 | 日帰り山行 | 宿泊山行 | ||
無雪期 | 有雪期 | 無雪期 | 有雪期 | |||
1 | 登山靴(1) | ローカットも可、軽いもの | 〇 | |||
2 | 登山靴(2) | ミドルカット、防水性の高いもの | 〇 | 〇 | ||
3 | 登山靴(3) | 厳冬期用、硬い靴底(アイゼン装着) | △ | 〇 | ||
4 | ザック(1) | 35L程度 | 〇 | 〇 | ||
5 | ザック(2) | 40~50L(小屋泊) | △ | △ | ||
6 | ザック(3) | 60~90L | 〇 | 〇 | ||
7 | ザックカバー | ザックより若干大きめのもの | △ | △ | △ | △ |
8 | ストック | できれば2本セットで | △ | △ | △ | △ |
9 | 軽アイゼン | 6本爪 | 〇 | |||
10 | アイゼン(10~12本爪) | ポイントガード付き、収納袋も | △ | 〇 | ||
11 | ピッケル | バンド(手首または肩掛け)とガードも | △ | 〇 | ||
12 | 寝袋(1)(夏用)* | ダウン(~300g) | △ | |||
13 | 寝袋(2)(3季用)* | ダウン(250~500g) | 〇 | |||
14 | 寝袋(3)(厳冬期用)* | ダウン(650~900g) | 〇 | |||
15 | 個人用マット* | エアー/ウレタン | △ | 〇 | ||
16 | 寝袋(シュラフ)カバー* | ゴアテックス製品 | △ | △ | ||
17 | スパッツ | 雪山用にはロングタイプ | △ | 〇 | △ | 〇 |
18 | 傘 | 軽量・折りたたみ | △ | △ | △ | △ |
19 | 水筒(1.0~2.0)** | プラスチックラミネート素材製も便利 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 |
20 | ポット(魔法瓶、テルモスTM) | 温かい/冷たい飲み物 | △ | △ | △ | 〇 |
21 | ヘッドランプ | 予備電池・電球も | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 |
22 | 時計(防水タイプ) | 高度計付きがよりよい | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 |
23 | コンパス | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | |
24 | 地図 | 地形図も | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 |
25 | ガイドブック | △ | △ | △ | △ | |
26 | 筆記用具 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | |
27 | カメラ | △ | △ | △ | △ | |
28 | サングラス | △ | 〇 | △ | 〇 | |
29 | ゴーグル | △ | 〇 | |||
30 | テントシューズ | △ |
*:寝袋(ドイツ語でシュラーフザックSchlafsack、英語でスリーピングバッグsleeping bag)などテント泊で使う品目は個人装備扱いとし、テント(共同マット込み)は共同装備として表から除きました。 **:日帰り山行でも最低1.0L以上の水筒(水)が必要です。長丁場の宿泊山行では、非常の場合も考えて2L程度以上の水を持ちましょう。なお、水は1種類だけでなく、お茶やスポーツ飲料、真水など数種類を小分けにして持つと、パッキングもしやすいし、そのときどきで楽しみながら飲めます。激しい登山が明らかなときは、電解質脱水を考慮して、スポーツ飲料がよいでしょう。 |
②’行動用具―(2)登攀用 |
No. | 装備品名 | 摘要 | 日帰り山行 | 宿泊山行 | ||
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無雪期 | 有雪期 | 無雪期 | 有雪期 | |||
1 | ハーネス* | スリングで代行もできる | △ | △ | △ | △ |
2 | カラビナ* | △ | △ | △ | △ | |
3 | スリング* | △ | △ | △ | △ | |
4 | スノーシューズ** | △ | △ | |||
5 | ワカン** | △ | △ |
*:ハーネス・カラビナ・スリングは個人装備扱いとし、ロープは共同装備として、表から除きました。 **:最近は登攀用の洋式スノーシューズが威力を発揮しているようです。ワカン携帯の判断は難しいです。 |
③生活用具 |
No. | 装備品名 | 摘要 | 日帰り山行 | 宿泊山行 | ||
---|---|---|---|---|---|---|
無雪期 | 有雪期 | 無雪期 | 有雪期 | |||
1 | ポケットナイフ | 小型のもの | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 |
2 | カップ、食器など | 飲食・簡単調理用のもの | △ | △ | △ | 〇 |
3 | コンロ(ガス仕様;燃料を含む)* | △ | △ | △ | 〇 | |
4 | ライター(マッチ) | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | |
5 | タオル | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | |
6 | バンダナ | △ | △ | △ | △ | |
7 | ティッシュペーパー | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | |
8 | ロールペーパー(トイレ紙) | △ | △ | △ | 〇 | |
9 | ビニール袋 | レジ袋、大ごみ袋** | △ | △ | 〇 | 〇 |
*:有雪期では日帰りの山行のときも、山の上でお湯を沸かしたりする目的のためにも、小型コンロ(ガスカートリッジ)・コッヘルはセットでパーティーごとに持つことを勧めます。 **:ごみ収納以外に、有雪期の幕営時の水用の雪採集や外着類、靴の収納目的などに有用です。 |
④その他の装備 |
No. | 装備品名 | 摘要 | 日帰り山行 | 宿泊山行 | ||
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無雪期 | 有雪期 | 無雪期 | 有雪期 | |||
1 | 救急処置セット(ファーストエイドキット) | 傷薬・傷テープ、テーピングテープなど | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 |
2 | 救急保温シート | 保温材(ツェルトで代用できる) | 〇 | 〇 | * | * |
3 | 防虫薬 | △ | △ | |||
4 | 日焼け止め剤(クリーム) | △ | 〇 | △ | 〇 | |
5 | リップクリーム | △ | 〇 | △ | 〇 | |
6 | 非常食 | 栄養価の高いもの | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 |
7 | 健康保険証 | コピーでも可 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 |
8 | 携帯ラジオ | 共同装備としても | △ | △ | 〇 | |
9 | 携帯電話 | 共同装備としても | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 |
*:テントを持っていることを前提に、不要としました。 |
個人装備は、あれば安心だからといって、なんでもかんでも持っては、荷物の重さで疲れてしまいます。自分の山歩きのスタイルに合わせて持参しましょう。 1.日帰り山行―無雪期
①調節:着衣の調節は、「重ね着」を工夫するということが基本です。 ②肌着の素材:Tシャツを含む肌着は、汗を吸収してすぐ乾く化学繊維のものがよいでしょう。 ➡「発熱放出素材(撥水性素材)」 ③雨具:一番大切な装備の一つです。多少値段が高くてもゴアテックス素材を使用しているなど、高性能で長持ちするものを選びましょう。 ④小物類:帽子、手袋、靴下の小物類は、冬以外は薄地(薄手)のものでよいでしょう。 ⑤防寒着:春秋の日中は暖かいですが、朝夕は冷え込むことが多く、必ず防寒用の着衣を持っていきましょう。 ⑥発汗素材:夏は汗をかくことが多く、着衣の素材は肌にべとつかない品物(化学繊維)を選びましょう。
①ザックの容量:重い荷物を効率よく収納し運びやすくするザックは、荷物を入れても少し余裕を持たせるために、35リットル(L)程度の容量がよいでしょう。 ②ザック選びとチェック:自分の体にフィットするザックを選び、とくにショルダーベルト、ウエストベルト、背面の形状や構造などをチェックしましょう。 ③靴選び:初心者の靴は、応用のきく、軽量のもので、靴底ががっちりして、足首をしっかりとガードしてくれていて、外側(外郭)に防水性のある素材(ゴアテックスなど)を使っていて、かつ内側の湿気は外へ逃がす、透湿かつ防水素材のトレッキングシューズがよいでしょう。 ④ランプ:ヘッドランプは、どんな山に行くときにも必需品です。最近はLED式になりましたが、念のために予備の電池、電球も必ず持参しましょう。 ⑤地図・コンパス:地図とコンパスは1セットで持参し、山歩きをしながら実地で勉強していきましょう。
①小物:ライター、タオル、ティシュペーパ―は必携です。 ②食器類:数人で出かける場合は、カップ、コッヘル・食器、ロールペーパー、ビニール袋があると便利です。
①不測のケガや病気に対しての備えが救急薬品-最低でもキズ薬、キズテープ、包帯、胃腸薬、解熱剤などは必要です。 ②ツェルト:使わない場合が多いですが、天候急変など、何かあったときにのためにパーティーとして携帯しましょう。 2.日帰り山行―有雪期
①着衣の調節:気温の変化に対応するためには、着衣を調節して体温を調節することが肝心です。 ②着衣選び:安全面も考えて、人目につきやすいように、はっきりとした明るい色を着用するのがいいでしょう。 ③有雪期の着衣:雪山というと、寒いことを予想し必要以上に保温性を考えがちですが、実際のところ行動中は暑い場合が多いのです。汗をかいたとき、素早く吸収し乾燥しやすくする速乾性素材使用の下着が必携です。登山の服装は「重ね着」が必要だといいますが、これは乾きやすさ、保温性、温度調整のしやすさを実現するための工夫です。 ④防寒衣類:防寒着(ゴアテックス素材)、雨具、ダウンジャケット、厚地の長ズボンは必携です。 ⑤靴下・手袋:厚地のものにしましょう。
①靴:無雪期と大きく異なる装備は靴です。冬靴は、雪の中を歩くことを主目的とし、軽アイゼン(6本爪)または12本爪アイゼンが装着可能な、堅牢で保温性・防水性が高い品物にしましょう。日帰りであっても、山の状態や山域によっては、アルパインブーツを使用します。 ②水分:寒さの中では体が温かい飲み物を要求するので、テルモス(魔法瓶)を持参しましょう。 ③スパッツ:登山靴の足首廻りから雪等が入らないようにカバーをする、ゴアテックス素材のロングスパッツが必要です。
①ナイフ:小型の多機能ナイフ一つ持っていると、何かと役に立つものです。 ②タオル類:ティッシュペーパーとともに必携です。 【その他】 ①小物:無雪期持参装備と異なるのは携帯用カイロです。➡日帰り山行の「その他」を参照。 3.宿泊山行―無雪期
①着衣選び:山歩き用の着衣は、季節によって種類や組み合わせを変える必要があります。 ②中間着:中間着は保温性だけでなく、通気性・速乾性を持つなど、気候や運動強度に合わせて選びましょう。気象条件や、行程によって着脱するので、また日焼け防止のためにも、襟付きや、温度調節しやすい前開き形状のものがよいでしょう。 ③下着:登山は大量の汗を伴います。汗を素早く吸収させ拡散させ、肌をドライに保ち、汗冷えを防ぐ効果の高い製品がお勧めめです。行動着の下に高機能下着を着用するのが基本となります。 ④ズボン:パンツは歩行に影響するため、素材は足上げのしやすいストレッチ素材のものがよいでしょう。 ⑤行動時の上着:日差しが強い場合、あまり肌を露出させないよう薄手の長袖シャツ類があると便利です。
①寝袋(シュラフ):3シーズン用でコンパクト、軽量、保温性に富んだダウン(羽毛)製品がよいでしょう。寝るときの温度の状況により、着衣やザックカバー、マットで保温力を調整します。 ②ザックの容量:宿泊山行(テント)の場合、荷物も多くなるため軽量化を図ることが大切です。ザックの大きさは、宿泊日数により50~80L程度でしょう。併せて、自分の体形に合うサイズか、またフィット感も、よく確認しましょう。 ③マット:マットは安眠に欠かせない山岳用具ですが、タイプにより一長一短があります。写真のウレタンマット(左端)は、保温性が高く値段は比較的安価ですが、かさばります。 ④水筒:かさばらないプラスチック・ラミネートの袋状の水筒も便利です。
①濡れ防止:ビニールの大袋は、雨の日に、ザックの中に大袋を入れ、その袋の中に装備品を入れるなどします。濡れてはいけない衣類・カメラ・貴重品は、小さなナイロン袋に入れてから大袋に入れます。 ②紙:ロールペーパーはトイレでの使用のほかに、食事の食器拭きになります。
①紐:細引きの紐は、怪我をしたときの手足の固定用や、衣類を乾かす紐としてなど、いろいろな使い道があります。 ②ファーストエイド:救急品には、テーピングにガーゼ、ハサミ、頭痛、腹痛、下痢などに効くものを数種類、筋肉の炎症を抑える塗り薬や虫刺され、かゆみ止めも有用です。なお、日焼け止めは必携です。 ③健康保険証はコピーでもいいでしょう。 4.宿泊山行―有雪期
①手袋:雪山では、手袋は三重に重ねて使用する場合があります(一番中側に薄いウールまたはフリース素材の手袋、その上にフリースの手袋、一番上にゴアテックス製のオーバー手袋)。ウールの手袋は替えも用意しましょう。 ②外着:上着とオーバーズボンはゴアテックス製雨具でも代用可能です。 ③下着:速乾性で保温性の高い肌着がよいでしょう。 ④中間着:ダウンやフリースの防寒下着もあります。 ⑤靴下:厚手の靴下は換えも用意しましょう。 ⑥帽子:防寒帽子は耳までカバーするものにしましょう。 ⑦着衣の選び:冬は寒いので保温性の高い着衣が必要ですが、体を動かしにくいものは避け、適度な暖かさで、機能的な重ね着で対処することが肝心です。
①登山靴:冬季登山での足の冷えの原因は血行不良の影響も大きく、冬山登山靴の選定では、足入れのよさと若干のゆとりが大切です。12本爪アイゼンの装着には、アルパイン用の、靴底の硬い靴である必要があります。 ②スパッツ:ゴアテックス仕込みで内側の素材が頑丈な品物がよいでしょう。 ③アイゼン:12本爪を使用します。 ④ストック:先端のガードを外し、広いスノーバスケットを使用します。 ⑤ピッケル:持参については、登る山の状況により確かな判断が必要です。
①ビニール袋:大きなビニール袋は、水を作るための雪を集めるのに必携です。また、外気に触れないように、登山靴を入れておくのに便利です。
①ツェルト:宿泊山行でもテントを残置して別の山を往復したりする場合は、ツエルトは必携です。 ②非常食:クルミなど栄養価の高い食品や干しブドウ、ナッツ類などを持参します。 |